ヴェルディのオペラ映像「椿姫」「シチリア島の夕べの祈り」「仮面舞踏会」
本日の東京都の新型コロナウイルス感染者は初めて500人を超えて、534人だという。これからもっと感染者が増えるのだろうか。昨年の夏に北京に行って以来、どこも旅行していないので、せめて関西か小笠原諸島にでも行こうかと考えていたが、これではためらってしまう。仕事の打ち合わせもなるべく減らす必要がありそうだ。
ヴェルディのオペラ映像を3本みたので簡単な感想を書く。
ヴェルディ 「椿姫」 2014年 グラインドボーン音楽祭
みたことがないつもりで安売りBDを購入したが、見覚えがある。NHK・BSで放送されたもののようだ。
何はともあれ、ヴィオレッタを歌うヴェネラ・ギマディエワが素晴らしい。声が美しいし、歌の演技も見事、容姿も見事。まさにヴィオレッタが目の前にいるように感じる。それに比べると、アルフレードのマイケル・ファビアーノ、ジョルジョ・ジェルモンのタシス・クリストヤンニスは影が薄くなってしまう。
マーク・エルダーの指揮するロンドン・フィルはさすがというべきか、情感豊かで心にしみるが、もちろんセンチメンタルにはならない。演出はトム・ケアンズ。登場人物のほぼ全員が現代の服をきちんと着こなしており、まさしく物事が機能的に動く現代の劇として展開される。ただヴィオレッタだけがやけになまめかしい。私は疎いので専門用語がわからないが、下着に見えるような服を着ている。これは単に男性ファンへのサービスということではなく、ヴィオレッタと堅気の人との差を際立たせているのだろう。
ヴェルディ 「シチリア島の夕べの祈り」2010年 アムステルダム音楽劇場
とてもレベルの高い上演だと思う。歌手陣は充実している。とりわけ、エレーヌを歌ったバーバラ・ハーヴェマンに私は惹かれた。初めて聴く歌手だと思うが、フランス語の発音も美しく、知的な歌いまわしと容姿はとても魅力的だ。モンフォールを歌うアレヤンドロ・マルコ=ブールメスターも父親の優しさを持つ権力者の役割を見事に歌っている。声が美しい。アンリのブルクハルト・フリッツは体形と風貌から、二枚目というよりも、ちょっと浮世離れしたとぼけた人物像になっているが、それはそれで説得力がある。
ただプロシダ役のバリント・サボが、見かけは大変立派なのだが、フランス語と言えないようなフランス語で歌いまくるので、私としては大いに気になる。ほかの歌手たちは全員しっかりとしたフランス語を歌っているのだから、だれか一言注意してやればいいのにと思うのだが、大人の事情があってそれができないのだろう。
演出はおなじみのクリストフ・ロイ。このオペラは13世紀の実話に基づくが、全員が現代(あるいは1960年代?)の服を着ている。フランス・グランド・オペラの形式をとっているので、第3幕で長いバレエの場面が続くが、そこでは幼馴染だったアンリとエレーヌとニネッタの子どもの頃の家庭的な様子が再現される。歴史的な事件としてではなく、現代にも起こる文化衝突の事件として描いている。
パオロ・カリニャーニの指揮によるオランダ・フィルハーモニー管弦楽団は悪くはないと思うのだが、あと少しの勢いが感じられない。とはいえ、全体的にはとても見事な上演だと思う。
ヴェルディ 「仮面舞踏会」2008年 マドリード王立劇場
外見的にはいろいろと注文をつけたくなるが、マルセロ・アルバレスのリカルドとヴィオレータ・ウルマーナのアメーリアの歌を聴くと、「千両役者!!」と叫ぶしかない。とりわけ、アルバレスの歌は観客を引きつける力を持っている。
レナートのマルコ・ヴラトーニャもウルリカのエレーナ・ザレンバもとてもいい。とてもしっかりした歌と演技。マリオ・マルトーネの演出ではレナートが最初から悪役然とした扮装で登場するが、このような演出は多いのだろうか。このオペラにそれほど詳しくない私はよく知らない。私としては、もっと律儀な人間が妻を奪われたと誤解して復讐にかられるほうが説得力があるような気がするのだが。
ヘスス・ロペス・コボスの指揮は、これぞヴェルディといった感じでこのうえなくドラマティックでメリハリが強いのだが、私としては、これほど引き締まっていると、むしろ違和感を覚える。
とはいえ、ヴェルディのオペラの魅力、そして二人の歌手の声の威力を十分に堪能できた。
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