鈴木秀美&神奈川フィルの若々しい第九
2020年12月26日、ミューザ川崎シンフォニーホールで、神奈川フィルハーモニー管弦楽団によるベートーヴェンの第九演奏会を聴いた。指揮は鈴木秀美。
弦のヴィブラートの少ない古楽的なアプローチの第九だ。巨匠としてのベートーヴェンというよりも若々しいベートーヴェンが浮かび上がる。きびきびした音楽で、理詰めに音楽が高揚していく。いたずらにドラマティックにすることはないし、どこかを無理やりに強調することもないのだが、必然的に音楽が高まっていく。構成感はしっかりしており、最後まで形が崩れない。オーケストラはしっかりとした音をす。潤いのある音ではないのだが、このような指揮ではこれはけっしてマイナスにはならない。てきぱきとした音が心地よかった。
第2楽章が特に素晴らしかった。音が躍動し、オーケストラ全体が一つの生き物になったかのように生命力をもって動いていた。第3楽章は、ファンファーレのころから急に音楽がスピードを上げて高揚していった。このような解釈は初めて聴いたような気がする。ゆっくりゆっくりと高みへと進み、高みに達してからは急に饒舌になって音の動きを楽しみ始めたかのような雰囲気になった。
第4楽章も若々しさが広がった。独唱陣も若いメンバーだったのだと思う。みんなが若々しい声を聞かせてくれた。バスの氷見健一郎も朗々たる声、テノールの中嶋克彦も、この難しい旋律を豊かに歌った。アルトの布施奈緒子も落ち着いた美声。だが、私がとりわけ惹かれたのはソプラノの中江早希だった。なんと美しい声。ふくよかな豊かさがありながらも澄み切っており、ホール内に大きく響き渡った。
合唱はコーロ・リベロ・クラシコ・アウメンタート。30名ほどだったが、素晴らしい声だった。
今年4回目の第九だ。散々なベートーヴェン・イヤーだったので、年の瀬くらいは盛大にベートーヴェンを味わいたいと思ったのだった。これで終わりではない。あと2回、今年中に第九を聴く予定だ。それぞれに味わいが異なるが、今日は若さにはち切れそうなベートーヴェンを聴かせてもらった。鈴木秀美さんは決して若者というわけではないが、何と若々しい感性を持っているのだろうと感嘆した。
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