インバル&都響のブルックナー 都響サウンドに酔った
2021年1月13日、サントリーホールで都響スペシャル2021を聴いた。指揮はエリアフ・インバル。曲目は、前半にワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死、後半にブルックナーの交響曲第3番初稿版。
二度目の緊急事態宣言によって、20時以降の外出自粛が呼びかけられている。イベントは中止になっていないとはいえ、躊躇しないでもない。だが、かのインバルが2週間の待機を経て日本でコンサートを行う、しかも曲目がワーグナーとブルックナーとあっては足を運ばないわけにはいかない。それに、客席がガラガラだったら、インバルを悲しませることになってしまう。クラシック・ファンとして、それは避けたい。そう思って出かけたのだったが、客席は、3席のうち1席を空けてはいるものの、満席だった。
のっけから圧倒的な音だった。これぞ東京都交響楽団! まさに都響サウンドというべきだろう。クリアで色彩的でちょっと硬質で強靭。そして、何よりきわめて精妙。「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲の音色の変化がとても美しく、しかも深い。ちょっと硬質な官能が押し寄せてくる。一つ一つの楽器の透明な音のまま重なっていく。
ブルックナーの交響曲第3番はいっそう都響サウンド炸裂といってよいだろう。初稿版なので、ワーグナーからの引用のあるヴァージョン。昔から聴きなれたヴァージョンではない。CDでは何度か聴いているが、実演で聴くのは初めてだと思う。聴きなれない部分が出てきたり、聴きなれた展開にならなかったりで戸惑った。正直言うと、第1楽章では、私は音楽の中で迷子になり、途方に暮れた。だが、第3楽章以降は音の世界で心を躍らせ、感動し、ブルックナーの法悦にしびれた。
インバルの指揮は実に緻密。完璧にオーケストラをコントロールしているようだ。すべての音が絶妙に絡み合っているのを感じる。金管楽器がとりわけ腹に響く音を出す。しかし、決して重くない。引き締まった華麗さとでもいうか。このような音でブルックナーの大伽藍とでもいうべき音の建築物が現れる。昔ながらの重量感あふれる男性的なブルックナーではない。ちょっとマーラーっぽさを感じないでもない。だが、これはこれで素晴らしい。何度も感動に震えた。
国や都の呼びかけに反しての夜の外出だったが、実に満足。生の音楽は素晴らしい。インバルは素晴らしい。
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