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オペラ映像「エルナーニ」「二人のフォスカリ」「ジョヴァンナ・ダルコ」「アルツィーラ」

 二度目の緊急事態宣言が出て3週間。果たして、宣言の効果は出ているのかどうか。大いに気になるが、ともあれ、私としては政府・東京都の呼びかけに応じて、不要不急の外出はしないようにしている。仕事も半分はテレワークにして、コンサートも減らし、自宅で仕事をし、疲れたら、オペラ映像をみたり、CDを聴いたり。

 トゥット・ヴェルディの続きをみたので、簡単な感想を書く。

 

「エルナーニ」2005年 パルマ・レッジョ劇場

 このオペラの映像はニューヨーク・メトロポリタン・オペラのライブビューイングで一度だけみた記憶がある。その時も思ったが、私はストーリーについていけない。登場人物の言動にことごとく納得できない。オペラにおいて、登場人物に感情移入できないと、歌がかくも空々しく聞こえてくるものかと改めて痛感する。

 歌手陣は健闘している。エルナーニのマルコ・ベルティは輝かしい声、ドン・カルロのカルロ・グエルフィも気品ある声、シルヴァのジャコモ・プレスティアも威厳がある。エルヴィーラのスーザン・ネヴィスもしっかりした声。しかし、図抜けたすばらしさではなく、とりわけ恋人二人が外見的にも感情移入できないので、私は白々として画面を見ることしかできなかった。

 アントネッロ・アッレマンディの指揮によるパルマ・レッジョ劇場管弦楽団は少々もたつき気味だと思う。音楽が盛り上がっていかない。単調で切れ切れに感じる。ピエラッリによる演出に特に新たらしい解釈はないと思う。照明の暗い場面が多いのは致し方ないのかもしれないが、単調さを感じた。

 

「二人のフォスカリ」200910月パルマ・レッジョ劇場 

 簡素な筋書きながら、オペラ自体とてもおもしろいし、上演も素晴らしい。

 なんといってもレオ・ヌッチのフランチェスコ・フォスカリの歌唱と演技に圧倒される。息子を思いながらも何もできず、自らも力を奪われてしまう老人を痛々しく、しかも強い声で歌う。ヤコポ・フォスカリを歌うロベルト・デ・ビアージョも高貴な声で見事。ただ、メイクのせいか、顔の造作のせいか、悪役にしか見えないのが残念。タチアナ・セルジャンは澄んだ強い声でけなげな妻を歌う。容姿もこの役にふさわしくて素晴らしい。ロレンダーノを歌うロベルト・タリアヴィーニもいかにも悪漢の冷淡な役を見事に演じている。

 ドナート・レンゼッティの指揮するパルマ・レッジョ劇場管弦楽団も不満には感じなかった。ドラマティックに悲劇を描き、全体を緊密にまとめている。演出はジョゼフ・フランコーニ・リー。簡素ながらわかりやすい演出だと思う。

 いやあ、このオペラ、本当におもしろい。もっと上演されていいと思うのだが。

 

「ジョヴァンナ・ダルコ」 2008年 パルマ・レッジョ劇場

 私の知っているジャンヌ・ダルクの物語とはかなり異なる。娘が悪魔に惑わされていると信じて疑わない父親とジャンヌの肉親の愛憎が物語の中心になっており、ジャンヌは火刑にならない。話があまりに安易に展開するので、歌に説得力を感じない。

 カルロ7世のエヴァン・ボウラーズは高貴な声で明瞭に歌う。とてもいい歌手だと思う。ジョヴァンナのスヴェトラ・ヴァシレヴァはきれいな声だが、ちょっと一本調子。もう少し歌唱にメリハリがほしい。父親ジャコモを歌うのはレナート・ブルゾン。往年の名歌手であって、演技や表現力は見事だが、残念ながら声が伸びずに音程が不安定になる。

 ブルーノ・バルトレッティの指揮するパルマ・レッジョ劇場管弦楽団はとてもドラマティックに音楽を盛り上げる。ガブリエーレ・ラヴィアの演出はわかりやすいが、特に感銘を受けなかった。

 

「アルツィーラ」(演奏会形式) 2012年 ドッビアーコ

 このオペラの存在そのものをこれまで知らなかった。しかも、演奏しているのが、ドッビアーコ専修管弦楽団・合唱団とボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団だという。私はまったくこれらのオーケストラを知らなかった。指揮をするのはグスタフ・クーン。クーンの功績なのかもしれないが、予想よりもずっと見事な演奏。まったく不満はない。

 歌手陣も悪くない。日本人が三人も歌っているのにびっくり。平野和がアタリバ、土崎 譲がオトゥンボを歌う。そして、なんと主役のアルツィーラを歌うのは齊藤純子。私はこの人の歌を一昨年、新国立劇場の「フィレンツェの悲劇」で初めて聴いて圧倒されたのだったが、この「アルツィーラ」も素晴らしい。無理のない自然な発声で強く美しく歌う。立ち居振る舞いも含めて、ほかの歌手たちにまったく聴き劣りも見劣りもしない。このような世界の最前線で通用する日本人歌手が日本国内であまり知られていないのはとても意外だ。日本が誇るべき歌手だと思う。

 といいつつ、演奏会形式であるため、ストーリーがあまり把握できなかった。だが、音楽を聴く限り、ヴェルディ特有の盛り上がりがあり、歯切れの良さがあって、とてもおもしろかった。十分に楽しめた。

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