ヴァイグレ&読響の「新世界」 絶妙のバランス
2021年1月10日、緊急事態宣言の二度目の発出のため、少しためらったが、東京芸術劇場で、読売日本交響楽団の演奏を聴いた(「日曜マチネーシリーズ」)。指揮はセバスティアン・ヴァイグレ。
不要不急の外出は自粛するように求められているが、5000人以下のコンサートは開催されてもかまわないことになっている。チケットを購入しており、しかもヴァイグレは入国後、2週間の待機を経て日本で演奏してくれているのだから、これは聴きに行かないわけにはいかない。
曲目は、前半にリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」とブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番(ヴァイオリンは金川真弓)、後半にドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。とても良い演奏だった。
「ドン・ファン」は華やかで濁りのない音が際立っていた。曲想の変化も鮮やかで、しなやかに、そしてくっきりと音楽が展開していく。しかし、けっしてあざとくない。シュトラウスの交響詩は一つ間違うと、あざとくなってしまうが、そうはならない。ヴァイグレの指揮はまさに正統派の音楽を目指すものだと思う。緻密に構成され、勢いがあり、しなやかな優美さがある。読響も実力を発揮してとても美しい音を出している。
ブルッフについても、ロマンティックで美しかった。これも、行き過ぎると過度にロマンティックになり、形が崩れるのだが、そうはならない。金川のヴァイオリンの音もあざとさのない、抑制されたロマンティズムといえるようなもの。徐々に徐々にロマンティックに精神が広がりをもっていく。
「新世界より」も、同じ印象を抱いた。しなやかで優美でノスタルジックな部分と胸をかき乱すような激しい部分が魔法のように行ったり来たりする。絶妙のバランスをとりながら、勢いがあって調和の取れた音楽が進んでいく。そして、徐々に盛り上がり、高揚していく。
とても良い演奏だったが、ただ、ちょっと物足りなさも感じないではなかった。見事な造形、素晴らしく自然な流れ。最後には高揚していく。私は何度も感動した。だが、爆発的な感動は覚えなかった。しかし、これがヴァイグレの音楽なのだろう。
2度目の緊急事態宣言発出後、最初の日曜日だった。私自身がコンサートという不要不急の用件で都心に出ているわけだが、私と同じように都心に出ている人が意外に多いという印象を受けた。ごった返しているわけではなかったが、緊急事態宣言が出ているとは思えない人出だった。
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