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 オペラ映像 トゥット・ヴェルディ「アッティラ」「マクベス」「群盗」「海賊」

 一昨日だったか、久しぶりにコンサートに出かけたのだったが、歩く以外、特に何かをしたわけではないのに、足に筋肉痛を感じる。もともと極度の運動不足なのに、緊急事態宣言のせいでますます部屋にこもって巣ごもり状態。筋肉がふだん以上に衰えたらしい。反省して、今日、ちょっとだけ散歩に出た。

 トゥット・ヴェルディに含まれるヴェルディのオペラ映像を数本みたので感想を記す。ヴェルディを特に愛すわけではないので、初めてみるものがほとんどだった。

 

ヴェルディ 「アッティラ」2010年 パルマ・レッジョ劇場

 このオペラの映像を初めてみた。いや、それ以前に、ヴェルディについてまったく詳しくない私はこのオペラの存在を知らなかった。が、初めてみて、とてもおもしろかった。ヴェルディの音楽も躍動しているし、演奏も素晴らしかった。

 ジョヴァンニ・バッティスタ・パローディが、高潔で寛大でありながら、疑うことを知らぬゆえに裏切られていくフン族の王アッティラを見事に歌う。アッティラの信頼を得ながらも彼を殺害する女オダベッラを歌うスザンナ・ブランキーニも強い美声でこの気性の粗い女性を見事に造形する。容姿も含めてこの役にふさわしい。フォレストを歌うロベルト・デ・ビアージョは、初めのうち少し硬さを感じたが、高貴で凛とした声。エツィオのセバスティアン・カターナも張りのある美声。主役格の4人がびしりと決まって本当に素晴らしい。

 指揮はアンドレア・バッティストーニ。余計なことだが、2010年にはやせっぽちだったんだ!とびっくり。オーケストラをしっかりとコントロールしてドラマティックに歌う。

 ピエルフランチェスコ・マエストリーニによる演出は、背景に映像を映し出すだけのもので、少々安づくりな気がする。

 

「マクベス」20066月、パルマ・レッジョ劇場

 このオペラは何度かみているが、今回のような長いバレエの場面のあるヴァージョンをみたのは初めてだと思う。

 何はともあれ、やはりマクベスを歌うレオ・ヌッチが圧倒的。初めのうち、全盛期ほど声が出ないと思っていたが、そんなことはない。徐々に迫力を増していく。マクベスの迷いと覚悟を見事に歌う。マクベス夫人のシルヴィー・ヴァレルもとてもいい。容姿と演技はまさにマクベス夫人そのもの。それに比べるとちょっと声が弱い気がするが、それでも見事に歌いきる。マクドゥフのロベルト・イウリアーノ、マルコムのニコラ・パスコーリもとてもいいが、バンクォーのエンリーコ・イオーリは声が出ていない。

 演出はリリアーナ・カヴァーニ。確かに映画的なリアルな演出だが、特に新しい解釈はなさそう。ブルーノ・バルトレッティの指揮はとても躍動感があってよい。

 全体的にはとても良い上演だと思う。特に好きなオペラではないが、引きこまれてみた。

 

「群盗」2012年 ナポリ サン・カルロ歌劇場

 このオペラの存在は知っていたが、初めて映像をみた。音源を聴いたこともなかった。ヴェルディのオペラの中でもかなり存在感の薄い作品だと思うが、はじめてみて、なかなかおもしろいと思った。親しみやすく、感動的な歌がいくつもある。ストーリーも、もちろん突っ込みどころはあちこちにあるが、ともあれわかりやすい。

 カルロを歌うアキレス・マチャードは見た目では、群盗を率いる熱血漢には程遠いが、強い美声で音程もよく、歌唱も見事。そして、それよりもっと感銘を受けるのが、アマーリアのルクレシア・ガルシア。最初に登場した時には、役柄と容姿の距離を感じるが、澄んだ美声と見事なテクニックを聴くうち、この役柄に見えてくる。それだけの歌唱力といってよいだろう。悪役フランチェスコを歌うアルトゥール・ルチンスキもなかなかの美声で、なかなかの迫力。

 知らない曲なので何とも言えないが、ただニコラ・ルイゾッティ指揮のサン・カルロ歌劇場管弦楽団がちょっともたついている気がするのは気のせいか。演出についても、私には何も言う資格はない。フランチェスコが不具という設定になっていたが、それはシラーの原作によるのだろうか。私自身は少し違和感を抱いた。

 

「海賊」 2008年 ブッセート ヴェルディ劇場

 部分的にはアリアなどを聴いたことはあったが、このオペラ全体を通してみたのは初めて。2時間に満たないせいか、駆け足すぎて、やや説得力不足の気がする。グルナーラのコッラードへの恋心をもう少しリアルに描いてくれないと、私としてはストーリーについていけない。やや台本に難がある気がする。だが、音楽的には極めて充実。美しい音楽が次々と出てくる。

 今回の上演については、歌手陣は実に充実している。歌唱的にもとても良いが、外見的にも見事。こう言っては大変失礼かもしれないが、オペラ上演としては、これ以上は考えられないほど、美男美女たちが歌っている。コッラードのブルーノ・リベイロはよく響く美声だが、少し歌唱に切れの甘さを感じる。とはいえ、この役にふさわしい精悍な雰囲気の二枚目。メドーラのイリーナ・ルングはとてもきれいな声で清純に歌って素晴らしい。グルナーラのシルヴィア・ダッラ・ベネッタも軽めのとても美しい声で魅力的だ。セイドのルカ・サルシも見事な歌唱。ただ、トルコの強圧的で無慈悲な男という雰囲気が伝わらないので、なぜグルナーラがそれほど嫌うのか納得できない。演出(ランベルト・プッジェッリ)を含めて、その点をもう少し補強してほしかった。

 カルロ・モンタナーロの指揮するパルマ・レッジョ劇場管弦楽団はちょっと重ったるい気がした。もう少し切れ良くドラマティックに展開するほうが良いのではないかと思った。

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コメント

私もこのコロナ禍で筋肉の衰えを感じています。急に年老いたようです。散歩くらいはしていますが、それでは追いつかない感じです。いやですね。

投稿: Eno | 2021年2月16日 (火) 15時20分

Eno 様
コメント、ありがとうございます。週に2回ほどのコンサート通いがそれなりに運動になっていたことを痛感しています。意識的に運動をしないと筋力を保持できそうもありません。
ブログをしばしば読ませていただいています。幅広く、精力的にコンサートに行かれているご様子、見習いたいと思いつつ、私には難度が高そうな気がしています。
ともあれ、何とかコロナ禍を乗り切りたいものです。

投稿: 樋口裕一 | 2021年2月17日 (水) 11時14分

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