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エルサレム弦楽四重奏団 ベートーヴェン弦楽四重奏曲 最終日

 2021611日、サントリーホールブルーローズで、チェンバーミュージック・ガーデン、エルサレム弦楽四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏の最終日を聴いた。曲目は前半に第5番と第6番、後半に第11番「セリオーソ」と第16番。これまでの4日間は前期、中期、後期から1曲ずつ演奏されてきたが、もちろん16は3では割り切れないので、今日は変則的。最終日に短めの曲を4曲集めた感がなきにしもあらず。

 第5番は、まるでハイドンのような作品。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中では影が薄い。改めて聴いて、やはりベートーヴェンらしい起伏がなく、かといって初期の初々しさも感じられず、実は少々退屈だった。その点、第6番はとても魅力的だった。最初の楽章からとてもチャーミング。エルサレム弦楽四重奏団は美しい音でしなやかに初々しく演奏。リズムがとても自然で生き生きとしている。

 とはいえ、やはり後半が充実している。「セリオーソ」は、前半の曲のようなしなやかさや美しさよりも凝縮した緊迫感を表に出そうとしていたようだ。速めのテンポで音を畳みかける。だが、この団体の音はとても美しく穏やかなので、きつい音にはならない。「セリオーソ」というタイトルだが、決して厳粛にも深刻にもならない。深みのある音だが、根本的なところで音が美しいので、余裕を失わない。ベートーヴェンらしい激しい音で始まるが、終楽章は、これまでの深刻さを笑い飛ばすような、まるでロッシーニのオペラのような終わり方をする。それが実に鮮やか。最後の生の喜びの爆発を感じる。

 第16番は最高の演奏だった。

 私はベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中で、第16番が一番好きだ。最後に到達した平明・単純の極致。至高の平明とでもいうか。とりわけ終楽章の浮き立つような平明さが素晴らしい。そして、エルサレム弦楽四重奏団は、それを見事に演奏してくれた。明るくて平明でワクワクするほどのリズム感があり、生の喜びにあふれている。終楽章の見事さに私は叫び声を挙げそうになった。

 5日間、この団体の弦楽四重奏曲を聴いて、初めのうち、後期の曲に厳しさ、激しさ、鬱積した怒りがなくあまりに穏やかなのに違和感を抱いた。だが、聴き進めるうちに、これがこの団体の持ち味であり、解釈であることに気づいた。第12131415番でも、彼らはこの第16番のような境地を描こうとしていたのだろう。最後に16番を聴くと、それが非常に納得できる。それはそれで説得力のある解釈であり、十分に感動的な演奏だと思う。

 このようなすばらしい弦楽四重奏曲全曲の演奏を聴けて、とても幸せだった。

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