エルサレム弦楽四重奏団 ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏 初日
2021年6月6日、サントリーホールブルーローズで、チェンバーミュージック・ガーデン、エルサレム弦楽四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏の初日を聴いた。曲目は前半に第1番と第7番(ラズモフスキー第1番)と第12番。つまり、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の前期と中期と後期のそれぞれ最初の曲。
第1番の冒頭の音のなんとしなやかなことか。若きベートーヴェンの心のひだがわかるような演奏。しなやかで十分に繊細だが、決して弱々しくはない。ういういしくて、生き生きとしていてのびやか。音の重なりが生命の美しさをたたえるかのように聞こえる。
第8番も基本的には同じようなアプローチだと思う。だが、曲の性格のためにもっとダイナミックでスケールが大きくなる。アンサンブルがとても美しい。近年の若いグループによくあるような緻密なアンサンブルによる切込みの強い激しい表現ではない。しなやかで柔和。だが、生命力にあふれているので、小さくならない。素晴らしい演奏だと思った。第3楽章の悲しみをたたえた曲想も実に美しく、終楽章の盛り上がりも素晴らしい。感動した。
第12番については、実は初めの2つの楽章については少し違和感を抱いた。後期の曲までもしなやかな音楽に仕立てているような気がした。ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の予定調和を拒否するような力感が弱いように思った。だが、聴き進むうち、きっとこの四重奏団は後期の四重奏曲の中に生命の賛歌をにじませようとしているのではないかと思った。肯定の世界。そう考えると納得できる。第3・4楽章は生命が飛躍する。何はともあれ肯定。終楽章は素晴らしかった。
とても良い演奏だった。明日からの演奏も楽しみだ。
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