東京二期会「ファルスタッフ」 ペリーの演出に幻惑された
2021年7月17日、東京文化会館で東京二期会オペラ劇場「ファルスタッフ」をみた。テアトロ・レアル、ベルギー王立モネ劇場、フランス国立ボルドー歌劇場との共同制作公演。
昨日(16日)が初日だったが、新型コロナウイルス」感染者が出たとのことで、急遽、中止。今日の公演も開催されるかどうか、当日の朝、東京二期会の、HPで発表とのことで、11時過ぎに掲載されるまで予定が立たずに困った。ダブルキャストなので、主要メンバーは昨日予定されていた人たちと異なる。なお、指揮はド・ビリーが予定されていたが、来日が不可能になり、レオナルド・シーニという若い指揮者に変更になった。
幕が上がってすぐから、演出家ロラン・ペリーの世界に引き込まれる。一人一人の歌手たちの動きがコミカルでおしゃれで軽快。ペリーの演出はこれまで映像でかなりの数みてきたが、いずれも西洋人の仕草なので、日本人がまねをしても、このような雰囲気は出せないのではないかと危惧していたが、そんなことはない。動きの一つ一つが音楽にぴったり合い、楽しく、おもしろく、全体が一つのダンスになっている。幻惑されるといってもよいほど。
ガーター亭は、現代の住宅地区の片隅にあるバー。ファルスタッフはそこにたむろする、ちょっとガラの悪い常連。フォードは実直な銀行マン風の男性、アリーチェは品の良い婦人。特に大胆な解釈はないが、動きがリズミカルで漫画的でとても楽しい。歌手陣がそのような動きを完璧に自分のものにしており、実に自然。
歌唱についても全員がとても良かった。いつもは二枚目役の多い黒田博がだらしのない太っちょのファルスタッフを見事に演じ、しかも声にも余裕がある。フォードの小森輝彦も実直なこの役を見事にこなして、嫉妬の歌唱も様になっている。フェントンの山本耕平も恋人に振り回される気の弱い男をそれらしく演じてすばらしい。カイウスの澤原行正、バルドルフォの下村将太、ピストーラの狩野賢一もこれ以上は考えられないほどに完成されている。
女性陣も見事。その中でも私はアリーチェの大山亜紀子に惹かれた。初めてこの歌手を聴いたが、演技も声も堂に入っている。まさにアリーチェにぴったりの魅力的な声だと思った。ナンネッタの全詠玉も澄んだ美声がとてもよかった。クイックリーの塩崎めぐみもメグの金澤桃子も完成度が高かった。
そして、私がもう一人注目すべきだと思ったのが指揮のシーニだった。1990年生まれというから、30歳そこそこ。くっきりとメロディを流して、統率力もある。東フィルをしっかりまとめているように聞こえた。突然の代役で大変だったと思うが、私にまったく不満はない。
全体的にとても素晴らしい上演だと思った。カーテンコールにロラン・ペリーも登場。素晴らしい演出家。素晴らしい上演。東京二期会の上演を見るたびに、日本人のオペラのレベルもこれほどまでに上がったのだと感慨にふけりたくなる。
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