チョン・ミョンフン&東フィルのブラームス 円熟のチョン・ミョンフン
2021年7月2日、サントリホールで東京フィルハーモニー交響楽団の演奏を聴いた。指揮はチョン・ミョンフン。曲目は、ブラームスの交響曲第1番と第2番。
久しぶりのチョン・ミョンフン。20年ほど前、チョンが東フィルのスペシャル・アーティスティック・アドヴァイザーになり、ベートーヴェンの全交響曲が演奏された。私は全曲に足を運び、興奮した。ものすごい演奏だった。エネルギッシュでダイナミック。しかも構築性はゆるぎなかった。今回もそんなつもりで出かけた。
第1番冒頭、肩の力の抜けた音にびっくり。多くの指揮者が悲劇的に重々しく演奏する。チョンの演奏も十分に厳粛で深みがある。だが、無理のない、自然体の音。素晴らしいと思った。この後、徐々に盛り上がり、ダイナミックになっていくのだろうと思っていた。
ただ、実をいうと、第1番に関しては私は少し不満だった。もちろん良い演奏だと思う。東フィルから生きのよいきれいな音を引き出し、まったく誇張がなく、しっかりと整理されて自然に流れる音楽。ただ、かつてのチョンを知っている私は、きっと爆発があるはずだと思って待っていたのだったが、最後までなかった。どんでん返しがあるに違いないと思っていたのに、ふつうの終わり方をした映画をみた気分だった。あのエネルギッシュだったチョン・ミョンフンも円熟したものだと思った。
第2番は、第1番よりはずっとダイナミックになった。彫りが深くなり、音に厚みが増し、流れがうねるようになった。曲そのものが明朗で流動的であるためでもあるだろうが、ワクワク感があふれ出す。ホルンの音が美しく、ブラームスらしい人間的温かみがあふれ出す。第3楽章は弦の刻み方がとても美しかった。第4楽章は明るく盛り上がった。
私は第1番には少し不満を覚えたのだったが、第2番にはとても満足した。素晴らしい演奏だった。しかし、それにしても、チョン・ミョンフンも円熟したものだと改めて思った。肩の力を抜いて自然体で音楽を導きだしてくる。第3・4番が楽しみだ。
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