ヴァイグレ&読響 ブラームスの第2番 しなやかで丁寧な音楽が飛躍する
2021年7月10日、東京芸術劇場で読売日本交響楽団の演奏会を聴いた。指揮はセバスティアン・ヴァイグレ。曲目は前半にロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」序曲と、若き筝奏者LEO(またの名は今野玲央)が加わっての藤倉大作曲の箏協奏曲、後半にブラームスの交響曲第2番。
「セビリアの理髪師」序曲では、ヴァイグレの語り口のうまさに舌を巻いた。かなり遅めのテンポで音楽は始まった。弦楽器の音の美しさを存分に聞かせて、しなやかに美しく音楽を繰り広げる。音の隅々にまで配慮が行き届いている。本当に美しい。そして、後半ぐんぐんとエネルギッシュになり、猥雑感も出て快活に音楽を終える。素晴らしい。
現代音楽にも和楽器にも疎い私は箏協奏曲については、実はよくわからなかった。様々な奏法がなされ、不思議な音が聞こえる。華麗であると同時に、寂寞感もあり、宇宙的な広がりも感じる。箏のテクニックについてもどのような意味があるのかわからなかった。
ブラームスも素晴らしかった。先日、チョン・ミョンフンの指揮する東フィルでこの曲を聴いたばかりだが、まったく印象が異なる。何よりも、私は音のしなやかさに惹かれる。なんというしなやかな音であることか。楽器の一つ一つの音が透明で、その重なりがとても美しい。一つ一つの音が息をしているのを感じる。ヴァイグレはそのような音を丁寧に紡ぎ、重ねあい、絡ませて音楽を進めていく。その様子が目に見えるようにわかる。
ただ、実をいうと、第1楽章はあまりに音楽の作りが丁寧なために、私はちょっと退屈した。もう少し、力任せのところがあってもよいような気がした。だが、第2楽章以降、音楽がますます深みを増し、強度を増してきた。ヴァイグレはあわてず騒がず、じっくりと音楽を構築していく。楽章が進むごとに、それまで丁寧に作られてきた音楽世界がいっそう深まり、聴き手を深い世界に誘い込む。終楽章はまさに躍動。これまで丁寧に作られてきた世界がそれまでの枠からはみ出し、大きく飛躍し、より高いところに向かっていく。感動した。
実に完成度の高いブラームスの世界だと思う。読響のメンバーの実力を改めて知ることもできた。満足!
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