鈴木雅明&新日フィル ベートーヴェン第4番・第3番 一気呵成に音楽世界が
2021年7月9日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートを聴いた。指揮は。曲目は、前半にベートーヴェンの交響曲第4番、後半に第3番「英雄」。私の理想とするすばらしい演奏だった。
いうまでもなく、ヴィブラートの少ない古楽風の演奏。金管楽器がまるで打楽器のように扱われて勢いはじける。その効果が素晴らしい。誇張もなく、テンポを動かすこともない。だが、まぎれもなくベートーヴェンの音楽世界が現れ、それがスケール大きく展開されていく。第4番は第1楽章から最後まで、まさに一気呵成に音楽世界が畳みかけられる。若々しいエネルギーにあふれている。打楽器めいた金管が輪郭を明確にし、低弦がしっかりとした陰影を作り出す。
第4番は、シューマンによって「乙女」と呼ばれたことは有名だが、私はむしろこれを第3番の進化形だと思う。第3番で肩に力を入れて独自の表現を獲得したベートーヴェンが肩の力を抜いて、いっそう発展させたのがこの曲だ。わざわざこけおどしをしなくても、形式を壊す寸前まで行かなくても、激しい情念が音楽の奥底にうずき、静かに爆発する。それを鈴木の演奏はとてもよく表している。
第3番は、いっそう感動的な演奏だった。これまで聴いてきた様々な演奏では、私は「英雄」の第1楽章にあまりの力みのゆえの形式の崩壊を感じていた。だが、今日の演奏を聴くと、決してそれを感じない。形式は崩壊せず、ギリギリのところでとどまってベートーヴェンの精神がはちきれそうになっている。第3楽章まで速いテンポで演奏、そして第4楽章で突然、テンポが遅くなった。これまで走ってきた経緯を振り返るようにして、再び大きく展開し、エネルギーにあふれた若々しい世界が広まった。
アンコールは、掲示をみるのを忘れたが、たぶん「プロメテウスの創造物」の終曲。「英雄」の第4楽章でベートーヴェンが再利用した元の曲。とても雰囲気のある演奏。田舎のダンスの雰囲気があってとてもいい。
鈴木兄弟、ご子息、まさに恐るべし。
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