井上道義&新日フィル ショスタコーヴィチ第8番 深い憤りを共有している気になった
2021年7月3日、サントリーホールで新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートを聴いた。曲目は前半にショスタコーヴィチのジャズ組曲第2番よりの5曲と、後半にショスタコーヴィチの交響曲第8番。指揮は井上道義。
私は特にショスタコーヴィチに思い入れを持つ者ではない。この二つの曲も実演を聴くのは初めて(ただもちろん、ワルツ第二番は単独で何度か聴いた記憶がある)。第8番の交響曲は録音ではもちろん何度か聴いているが、あまりに陰鬱で、あまりに深刻なため、これまで好んで実演を聴こうとは思わなかった。そんなわけで、今回ほとんど初めて聴いたわけだが、とても良かった。
まず、濁らない轟音にしびれた。瞬発力のある音が響く。澄んだ音だが、そこはショスタコーヴィチだけあって、奥に激しい魂の葛藤があり、人生への怨念めいた憤りがあり、何かしら割り切れない鬱積した思いがある。だが、それが重くのしかかるのでなく、すがすがしさのようなものがある。そして、メロディ線が美しく、深い思いのこもった歌になっている。井上道義の心持の清潔さのようなものが現れているとでもいおうか。私はシンバルの響く轟音に何度かしびれた。ショスタコーヴィチの深い憤りを共有している気になった。
ショスタコーヴィチ・マニアでなく、この曲についても初心者の近い私としてはこんなことしか言えない。しかし、井上道義のショスタコーヴィチたるやすさまじいものだと改めて思った。新日フィルの精度の高さにも確認できた。これからも聴きたい。
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