藤原歌劇団「清教徒」 とても良かったが、あと少しの緻密さがほしい
2021年9月11日、新国立劇場オペラパレスで、藤原歌劇団公演(共催:新国立劇場・東京二期会)「清教徒」をみた。合唱は藤原歌劇団合唱部、新国立劇場合唱団、二期会合唱団、管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団。指揮は柴田真郁、演出は松本重孝。
緊急事態宣言中のため、合唱団は全員マスク着用。声が聞こえてこないが、これについてあれこれ言っても仕方がない。全体的に大健闘の上演だったと思う。
エルヴィーラを歌う光岡暁恵がとてもよかった。音程の良いしっかりした声。容姿的にもこの役にふさわしい。リッカルドの井出壮志朗も安定した声でしっかりと歌っていた。そのほかの歌手陣もかなり健闘している。声がよく出ているし、何より、みんながなかなかの美声。だが、細かいところでほころびを感じた。アルトゥーロの山本康寛は高音が少し苦しく、何度か声が裏返ってしまった。ジョルジョの小野寺光、ヴァルトン卿の安東玄人は、少し音程の揺れを感じた。ただ、歌う場面は多くなかったが、エンリケッタの丸尾有香は容姿的に誇り高い王女に見えて、とてもよかった。
柴田の指揮する東フィルもなかなかよかった。数か所、歌と合わないのを感じることもあったが、全体的にしっかりとまとめていた。松本による演出もわかりやすく、歌手たちの動きも自然で、リアル。特に新たな解釈があるわけではないと思うが、私に不満はない。
ただ、正直言って、全体的にとても良いのだが、すべてがぴしりときまっているわけではない。そうなると、ベッリーニの、あの背筋をしゃんと伸ばして気高く歌うような雰囲気が出てこない。みんなが頑張って、かなり良い演奏をしているのはよくわかるのだが、ベッリーニのオペラの魅力が立ち上ってこない。ベッリーニの凛とした魅力を出すためには、細部に至るまでおろそかにしてはならないのだが改めて思った。
日本のオペラのレベルも随分上がったと思いつつ、あと少しの緻密さがほしいものだ。もしかしたら、その「あと少し」がとても難しいのかもしれないが。
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