スダーン&東響の「幻想」 ぞっとするほどリアリティのある音
2021年9月25日、サントリーホールで東京交響楽団演奏会を聴いた。指揮はユベール・スダーン、曲目は前半にフランクの交響詩「プシュケ」より第4曲「プシュケとエロス」、メゾソプラノの加納悦子(チケット販売時には、アリス・クートが予定されていた)が加わってショーソンの「愛と海の詩」、後半にベルリオーズの「幻想交響曲」。
加納は、私の席のせいかもしれないが、フランス語の言葉がまったく聞き取れなかったのが残念。きれいな声で歌っていることはわかるのだが、やはり声がオーケストラにかき消されて、母音も子音も識別できなかった。もう少し狭いホールで、しかももう少しオーケストラの音量を小さくするほうが良かったと思う。
東響の音は、フランスの色彩感があって、とてもよかった。フランクもショーソンもフランス的なイントネーションを見事に描いていると思った。
後半の「幻想」は素晴らしかった。東響が研ぎ澄まされた音を出し、しかも時にそれが爆発した。ベルリオーズの情念というか、魑魅魍魎というか、そのような得体のしれない想念が音楽として乗り移ったかのような個所が何度かあった。ホラー映画をみてぞっと鳥肌がたつような感覚を何度か覚えた。ぞっとするほどリアリティのある音だと思った。
ただし、決して暗い音ではない。おどろおどろしいわけではない。こけ脅しの不気味な音というわけではない。むしろ明るめの明瞭な音だと思う。だからこそ、余計にリアリティを感じる。前半、抑え気味にして最後に爆発するタイプの演奏がよくあるが、スダーンの演奏はそれとは少し違う。第一楽章から、かなりドラマが動き、激しい魂の音が押し寄せる。
とても満足のできるコンサートだった。
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コメント
突然に失礼致します。私は、先日区立の図書館から、先生の「65歳 何もしない勇気」を借りまして、只今読み終えた、11月には66歳になる現況は一人暮らしになった、年金と3時間のパート収入で生計を立てている週一のバレーボールの練習が楽しみな女性(?)です。
ここ数年、読んでみたいと思って購入した本も、昔のように一気に読み終えることができませんでしたが、今朝はお年頃のせいか、早々と目が覚めてしまい、良い機会だとコーヒーをゆっくり頂き、洗濯物を干し終えてから、さぁ~~・・・と、本の一ページから始まり、今に至りました。
語りかけてくださるような、分かりやすいお優しい文章と、全てが興味深く、私の理想がそこにありました!
図書館に返却するまでに、もう一度読んでみたいと思います。
(以前から、行ってみたいと思っておりました「フジコヘミングさん」、「松山千春さん」のコンサートのチケットが取れ、来月・再来月と、この歳になってやっと実現しそうです。3年前に行ったゴッホの絵画展にも、また行ってみます。12月の国内ツアーにも、10数年ぶりになりますが今度はひとりで参加してみようと思います!)
65歳の私にぴったりなご著者にめぐりあえて嬉しくて、こちらに侵入してしまい申し訳ございませんでした。
ありがとうございました\(^-^)/
(これから、お勤めに出掛けます。)
投稿: 吉原 智子 | 2021年9月29日 (水) 09時21分
吉原 智子 様
コメント、ありがとうございます。
拙著をお読みいただき、ありがとうございます。好き勝手なことを好き勝手に書いただけの本ですので、おほめいただけると恐縮です。
参考にできることがありましたら、お使いいただけると、私としましてもうれしく思います。何はともあれ、楽しいことを見つけ、楽しいことをするのが、上手に生きるコツだと思います。私もこれからもそのように生きていくつもりでいます。
投稿: 樋口裕一 | 2021年9月29日 (水) 23時40分