レネス&松田&都響のプロコフィエフ 松田のピアノに驚嘆
2021年9月27日、東京文化会館で東京都交響楽団の定期演奏会を聴いた。指揮はローレンス・レネス、曲目は前半にワーグナーの「さまよえるオランダ人」序曲と、松田華音の独創が加わって、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番、後半にプロコフィエフの交響曲第5番。
いただいたチケット。最前列(正確に言うと2列目だが、1列目は空けられていた)だった。いつもと違う音にびっくり。ワーグナーやプロコフィエフを最前列で聴くと、これは格別。
松田華音のあまりのテクニックにも圧倒された。乱れなく、美しい強い音色で超絶技巧のこの曲を弾きこなす。そして、そこにまさにプロコフィエ フの突き抜けた個性が現れている。躍動し、羽ばたき、跳躍し、流動する。そこに抒情もあり、強い意志もあり、諧謔もあり、怒りもある。それを見事に音楽にしていく。凄い。この細腕からこんな音が出てくるなんて!
レネスの音を作り出すテクニックにもとても感銘を受けた。都響サウンドをしっかりいかしてプロコフィエフの華麗で躍動的な音響を作り出している。颯爽とした音を作り、それぞれの音が濁らない。みごとなタクトテクニックだと思う。
ただ、音楽の作りとしては私は少々疑問を持った。プロコフィエフはそれほど頻繁に聴いているわけではないので、偉そうなことは言えないが、どうもこの指揮は一本調子に思える。音響はとてもきれいなのだが、音楽の組み立てがよくわからない。私の頭の中でうまく構成されていかない。その点、不満に思った。特に交響曲第5番。私は時々音楽の方向感覚を失ってしまった。もちろん、私の聴き方が悪いのかもしれないが。
とはいえ、松田華音の目覚ましいプロコフィエフを聞けてとても満足。
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コメント
樋口先生、おはようございます。
私は今回残念ながら行けなかったのですが、
こちらは年プロではタベア・ティンマーマンさんのヴィオラがソリストのところ来日不可となり松田さんのプロコフィエフ3番になったようですね。ふつうでは10指で弾けない箇所がたくさんあるといわれる超絶ピアニストいじめ?プロコP協3番(特に最終楽章のファイナルではあのテンポで2つの鍵盤を1指で弾かざるをえない箇所がたくさんあるらしいです)、松田さんの演奏で聴いてみたかったです!さらにアンコールはラフマニノフ楽興の時6番だったそうですね!
指揮者のレネスさんはオランダ出身で、この都響の1回の公演のためだけに2週間隔離をされ、都響のインタビューによるとこの1年半ほとんどの仕事がなくなり、今夏は趣味のセーリングでマルタからイタリアやギリシャをめぐるヨットの一人旅で嵐の中怖い思いをした・・・という正に「さまよえるオランダ人」だったようです。
都響のインタビュー:
https://www.tmso.or.jp/j/news/14732/
話がそれますが、
今の状況で特に年間プログラムで海外から招聘を企画しているオーケストラがどう対処し乗り切るか、ずっと注目しています。我々リスナーは受け入れるだけなのですが、この状況はそのオケのポリシーや逆境におけるギリギリの知恵などが見えることがあり、実際の演奏会とは別なところで感動することも多いです。
そんな中、2020年なかばから定期演奏会の会員券はいったんすべて現金書留で払い戻し、演奏会1回ごとに会員優先販売し、都度ていねいに中止や変更を繰り返している都響の手間と努力とパワーには特に頭が下がります。
他のオーケストラや関係者についても、リスナーに見える範囲でのご苦労と熱意を私はずっと忘れないと思います。
つい長くなりました。
オーケストラや関係者にはそれぞれ異なった事情や経済的な背景があるかとは思いますが、早くこのような事情で変更や中止がなくなる状況を心から祈るしかありません。
投稿: Tamaki | 2021年9月28日 (火) 09時40分
Tamaki様
コメント、ありがとうございます。
松田さんのアンコール、ラフマニノフだったんですね。これもすごい演奏でした。
都響は基盤がしっかりしているために、まだしもほかのいくつかのオーケストラよりも余裕があるとは言えるのかもしれませんが、とてつもないご苦労をなさっていることと思います。私などは皆さんの苦労に甘えて、好き勝手に楽しんでいるだけですので、まったくもって皆さんに感謝するしかありません。
投稿: 樋口裕一 | 2021年9月29日 (水) 23時36分