井上&宮田&読響のゴリホフのチェロ協奏曲 超時間、超空間の音楽!
2021年9月29日、サントリーホールで読売日本交響楽団定期演奏会を聴いた。指揮は井上道義、曲目は、前半に宮田大を独奏に迎えて、ゴリホフのチェロ協奏曲「アズール」(日本初演)、後半にストラヴィンスキーの管楽器のための交響曲とショスタコーヴィチの交響曲第9番。
実は、チラシをみて、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲が曲目に含まれると勘違いして、チケットを購入、先日の読響のコンサートに出かけた際に改めてチラシを見てびっくり。ゴリホフという作曲家は1960年生まれだという。現代曲に関心のない私としては、退屈な時間を覚悟して出かけたのだった。
だが、どうしてどうして。とてもおもしろかった。いや、それどころか凄い曲だと思った。様々のパーカッションやアコーディンが加わる。中央アジアの音楽を思わせる響き。鳥の羽ばたき、大気の動きの音が聞こえる。宇宙的な広がりを持っている。超時間的、超空間的とでもいうか。25分ほどの曲だが、まったく退屈せず、圧倒されて聴いた。チェロの宮田のとてつもないテクニックにも驚嘆。緻密にして壮大な世界を聴かせてくれた。
後半のショスタコーヴィチの交響曲第9番もとてもおもしろかった。いったいショスタコーヴィチはこの曲をどんなつもりで作ったのか。ソ連当局に向かって「あかんべえ」をしているのか。韜晦なのか自虐なのか皮肉なのか。調子はずれの人を食ったような音楽が続き、グロテスクとさえいえるような身振りがある。だが、その中に純粋なものへの憧れのようなものも確かに聴きとれる。結局、よくはわからないが、ともあれそのようなごったまぜのようなショスタコーヴィチの特異な世界を井上道義の指揮する読響は見事に説得力を持って聞かせてくれた。なんだかよくわからないが、ともあれショスタコーヴィチの矛盾に満ちた世界が現前に広がる。なんだかよくわからないが、ともあれ凄い世界だ。何度か感動に震えた。
私は実は音楽に関してはかなり偏狭な人間で、嫌いな作曲家がたくさんいる。嫌いというわけではないもののまったく関心のない作曲家も多い。いや、正確に言うと、7人の作曲家が大好きで、十数人の作曲家がかなり好き、それ以外は嫌いか無関心。だから、同じ作曲家の曲ばかりを聴いている。もういい加減トシだから、これから無理をしないで、好きな作曲家の曲ばかり聴いて過ごそうと思っていたが、今回のように知らない作曲家の曲を聞いて感動することもある。たまには幅を広げてみるのもいいものだと思った。
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コメント
樋口様もお見えになっていたんですね。私も行きました。ゴリホフの「アズール」は私もおもしろいと思いました。最近の現代音楽は、映画音楽やらポップスやら、その他ありとあらゆる音楽との融合過程にあるんじゃないかと思いました。ところで、樋口様がとくにお好きな7人の作曲家とはだれなんでしょう。ワーグナーとヤナーチェクと、それから? 当ブログでももちろん結構ですが、本になったら、ぜひ読ませていただきたいと思います。
投稿: Eno | 2021年10月 1日 (金) 08時52分
樋口様もお見えになっていたんですね。私も行きました。ゴリホフの「アズール」は私もおもしろいと思いました。最近の現代音楽は、映画音楽やらポップスやら、その他ありとあらゆる音楽との融合過程にあるんじゃないかと思いました。ところで、樋口様がとくにお好きな7人の作曲家とはだれなんでしょう。ワーグナーとヤナーチェクと、それから? 当ブログでももちろん結構ですが、本になったら、ぜひ読ませていただきたいと思います。
投稿: Eno | 2021年10月 1日 (金) 08時52分
Eno 様
おいでになっているのではないかと思っておりました。
ブログ拝見しました。そうでした、ボリホフの楽器配置について書いておく必要がありました。独特の配置でしたね。
好きな作曲家7人は以下の通りです。ここに書かせていただきます。なお、このところヤナーチェクに接する機会がないため、残念ながら降格してしまって、代わりにロッシーニが昇格したのでした!
●大好きな7人の作曲家
J.S.バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ロッシーニ、ワーグナー、ブラームス、リヒャルト・シュトラウス
●それと変わらないくらい大好きな作曲家
メンデルスゾーン、ブルックナー、ヤナーチェク
●かなり好きな作曲家
フランク、オッフェンバック、ラヴェル、プーランク、ヴェルディ、ドニゼッティ、チャイコフスキー、リムスキー=コルサコフ、ドヴォルザーク、シベリウス、ショスタコーヴィチ、ヨハン・シュトラス
よろしかったら、Eno 様の好みも教えてください。
投稿: 樋口裕一 | 2021年10月 2日 (土) 09時17分
樋口様のお好きな作曲家をご披露いただき、ありがとうございます。なるほどなあ、と思うと同時に、最近「ロッシーニが昇格した」というくだりに思わず笑ってしまいました。
私の好きな作曲家は?とボールが投げ返されたのには慌てました。そんな用意はなかったのですが、樋口様の真似をして考えてみました。
まず特に好きな作曲家はモーツァルトとシューベルトです。どちらが一番好きかは決めがたく、たぶん一生決められないと思います。
次にベートーヴェンとショスタコーヴィチが好きです。神は(というか、運命は)ベートーヴェンに耳の障害の試練を与えたように、ショスタコーヴィチには全体主義国家という試練を与えたのだと思います。
バッハも抜かすわけにはいきません。いつ、どの曲を聴いても、バッハはいいなと思います。
あとはワーグナーとドビュッシーでしょうか。
以上が「大好きな7人の作曲家」です。
「それと変わらないくらい好きな作曲家」はフランク、ロッシーニ、ヤナーチェクでしょうか。ヘンデルを入れようかどうしようかと迷うところです。
現代音楽も好きですが、私の場合は、作曲家を聴くというよりも、個々の曲を聴くという傾向のようです。
以上、長々と書いてしまい、申し訳ありませんでした。
投稿: Eno | 2021年10月 2日 (土) 12時08分
Eno 様
お答えいただき、ありがとうございます。
お好きな作曲家からEno 様のお人柄がわかる気がします。
私と重なる作曲家、重ならない作曲家、とても興味深く思います。
私が一番好きなのは、ベートーヴェンなのかワーグナーなのか、Eno 様と同じように決まらずにいます。ショスタコーヴィチについては、私はいつも「わからん」と思ってしまいます。それに対して、最近になって興味を持ち始めました。
いずれにしましても、このような話はとても楽しいものです。
投稿: 樋口裕一 | 2021年10月 3日 (日) 00時08分