« グルベローヴァ逝去! | トップページ | ハイティンクのこと、そして「コンバット」のこと再び »

ラザレフ&日フィルのショスタコーヴィチ第10番 芝居っけたっぷりで爽快

 20211022日、サントリーホールで日本フィルハーモニー交響楽団演奏会を聴いた。指揮はアレクサンドル・ラザレフ。曲目は、前半にリムスキー=コルサコフの「金鶏」組曲と、福間洸太朗が加わって、同じリムスキー=コルサコフのピアノ協奏曲、後半にショスタコーヴィチの交響曲第10番。

 先日のブロムシュテットとN響のときと同じように、ラザレフが最初に登場して、その後、団員が現れた。このごろ、このような登場の仕方がスタンダードになったのだろうか?

 オペラ「金鶏」は大傑作だと思うが、組曲は、私はあまり楽しめなかった。ラザレフと日フィルの演奏は、とても色彩的で濁りがなく、リムスキー=コルサコフの音楽の魅力を伝えてくれたと思う。だが、ストーリーや場面から切り離されてこの音楽を聴いても、滑稽さや神秘を感じ取ることができない。やはりこの曲はオペラとして聴きたいと思った。

 ピアノ協奏曲はとてもおもしろかった。先ごろ、ブリリアントから発売されているリムスキー=コルサコフの25枚組作品集を購入し、コンドラシン指揮、スヴャトスラフ・リヒテルのピアノ、モスクワ・ユース管弦楽団による演奏を聴いて、とても魅力的な曲だと知った(ただ、録音はあまりよくない)。きわめてオーソドックスな造りで、理にかなった展開を見せる。リストのピアノ協奏曲第2番をモデルにして作曲したとのこと。今回、楽しみにして聴いたが、福間洸太朗のピアノの切れもよく、一つ一つの音の粒立ちも美しい。ラザレフの音も明瞭で美しく、音楽に張りがあってとても良い演奏だと思った。

 私はピアノをあまり聴かないし、しかもショパンはかなり苦手な作曲家なので、恥ずかしいほどに無知なのだが、たぶんピアノのアンコールはショパンのとびきり有名なノクターンだと思う。ただ、ショパンを苦手とする私の感覚なのでまったくあてにはならないのだが、なんだかあまり魅力的なショパンではなかった。リムスキー=コルサコフの協奏曲の演奏のほうがずっとよかった。

 後半のショスタコーヴィチは、圧倒的に素晴らしかった。ラザレフが指揮すると、日フィルの音が明快になり、轟音でありながらもまったく濁りがなくなる。そして、スケール大きく展開する。あれこれ仕掛けをし、しばしば轟音を鳴り響かせる。かなりあざといというか、芝居っけたっぷりの演奏だと思うが、ここまでやってくれると、むしろ潔いというか、爽快でもある。ぐいぐいと音楽を進めて、聴いているものを巻き込む。私はしばしば我を忘れて音楽に没入した。

 ただ、ショスタコーヴィチの音楽はもっともっと内にこもって鬱積して、ヒステリックなまでに自己破壊的だと思うのだが、ラザレフの演奏にはそのような破滅的なところは感じられなかった。とはいえ、ないものねだりをしても仕方があるまい。

 ラザレフは立ち居振る舞いも芝居っけたっぷり。あれこれ団員や客席に向かってジェスチャーをする。ただ、私にはそれらのジェスチャーの意味がよく分からなかった。楽団員も十分にわかっていないように思えた。楽団員から退場した後、ラザレフが残って拍手を受けてから退場した。

|

« グルベローヴァ逝去! | トップページ | ハイティンクのこと、そして「コンバット」のこと再び »

音楽」カテゴリの記事

コメント

たびたびのコメントで申し訳ありません。私もこの演奏会を聴きました。リムスキー=コルサコフの2曲がとても楽しかったです。昔は生意気にも「リムスキー=コルサコフなんて」とバカにしていたのに、自分の変わりように驚きました。これも年のせいでしょうか。リムスキー=コルサコフの25枚組とはすごいですね。私も少し聴いてみようと思います。

投稿: Eno | 2021年10月24日 (日) 08時47分

Eno様
コメント、ありがとうございます。
中学生のころにレコードを買って「シェエラザード」を聴いたものの、それほど名曲とは思えず、その後、私も50年以上にわたって、「リムスキー=コルサコフなんて」と思ってきました。が、シラー劇場、バレンボイムによる「皇帝の花嫁」のBDをみて、決定的に考えが変わりました。これは大作曲家だと思ったのでした。これからも機会を見つけて聴こうと思っています。
ブログを読ませていただきました。ラザレフの「客観性」、確かにおっしゃる通りだと思いました。作品と適度の距離をとっているのが感じられました。ありがとうございました。

投稿: 樋口裕一 | 2021年10月25日 (月) 10時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« グルベローヴァ逝去! | トップページ | ハイティンクのこと、そして「コンバット」のこと再び »