ブロムシュテット&カヴァコス&N響のブラームスに魂が震えた!
2021年10月16日、東京芸術劇場でNHK交響楽団のコンサートを聴いた。指揮はヘルベルト・ブロムシュテット。曲目は、前半にレオニダス・カヴァコスが加わってブラームスのヴァイオリン協奏曲、後半にニルセンの交響曲第5番。魂が打震えるような名演奏だった。
楽団員より前に、ブロムシュテットとカヴァコスが肩を並べて舞台上に登場。マスクをつけているのですぐには誰だかわからなかった。それに続いて楽団員が現れた。大拍手。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、第1楽章でほんの少し音楽の停滞を感じたが、それを除いて、いかにもブロムシュテットらしい自然で明るめで生き生きとした音楽が流れていく。94歳になるはずなのだが、まったくそのようなことを感じさせない。きびきびとして明快。そこにブラームスらしい燃える情熱がある。ちょっと足取りがおぼつかない感じで登場したが、音楽はまったく年齢を感じさせない。素晴らしい。いや、それどころか奇跡としか言いようがない。N響のメンバーもとても美しい音を出す。ブロムシュテットの指の動きに合わせて、即座に反応してニュアンス豊かな音を出しているのがよくわかる。
カヴァコスの名前はもちろん前からよく知っていたが、演奏を聴いたのは初めてだったが、素晴らしいヴァイオリニストだと思う。折り目正しい清潔な音で、音程がよく、リズムもびしっと決まっている。特に第2楽章のメロディの歌わせ方に感嘆した。完璧なまでに安定した、まったく揺るぎのないリズムに乗って、流麗に歌われる。第3楽章も情熱的に歌われるが、リズムが崩れず、完璧に安定した音楽世界の中で歌われるので、感情による歌というよりは、知性のエッセンスによる歌のように聞こえる。いわば、哲学者が世界の本質を歌い上げているかのよう。こんなヴァイオリンをこれまで私は聴いたことがなかった。情熱的に躍動する音楽もいいが、このようにこの上なく安定し、この上なく知的な抒情が盛り上がっていくのもまた素晴らしい。第3楽章は知的に盛り上がって、私は何度も感動に身を震わせた。
後半のニルセンの交響曲第5番については、私は何かを語る資格はない。この曲を聴いたのは、たぶん2度目だと思うが、自信がない。もしかしたら初めてからも知れない。ニルセンという作曲家についても関心を持ったことがない。小太鼓やタンバリン、そしてクラリネット、ファゴットが大活躍して、なんだかよくわからない曲だと思ったが、ただ、ブロムシュテットの手にかかると、きわめてスケールが大きくなり、宇宙的になり、明快になり、人間賛歌になることを感じた。なんだかさっぱりわからない曲だと思いつつも、引き締まった音の中から大きく広がる豊かな音の響きに何度か感動した。きっと良い演奏なのだと思う。
コンサートの終わり、楽団員が退場した後にブロムシュテットが残り、コンサートマスターの白井圭に導かれて退場。まさしく奇跡のコンサートの終了だった。ブロムシュテットとカヴァコスが今宵を特別の日にしてくれたのを感じた。
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