鈴木秀美&OLCのメンデルスゾーンのシンフォニア 多感な生命体が走る!
2021年11月12日、三鷹芸術文化センター 風のホールで、オーケストラ・リベラ・クラシカ第45回定期演奏会を聴いた。
私も20数年前まで、メンデルスゾーンを世間知らずのお金持ちのお坊ちゃんで、作曲した曲も底が浅いと思っていた。ところが、そんなとき、当時大好きだったドホナーニがウィーンフィルを指揮したメンデルスゾーンの交響曲全集が発売になった。それを聴いて考えが変わった。なんと繊細で心豊かで奥の深い音楽であることか。そうして改めて聞いてみると、協奏曲も室内楽曲も宗教曲も本当に素晴らしい。それからしばらくして、10代前半に作曲した弦楽のためのシンフォニアのCDを聴いて再び驚いた。日本でいう中学生がこんな音楽を作曲するなんて、モーツァルト以上の天才ではないか!
そしてこの度、このところ目覚ましい名演奏を聴かせてくれている鈴木秀美が手兵のオーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)を振って、弦楽のためのシンフォニアの数曲(4番、10番、3番、13番、11番)を演奏すると知って三鷹まで出かけたのだった。
地味な曲のせいか、客はまばら。なんともったいないことか。素晴らしい演奏だった。それ以前に素晴らしい曲だと思う。初々しく、のびやかで、才気煥発。しかし、育ちが良いので、まったく嫌味がない。しかも、ユダヤ人差別を子どものころから受けていたのかもしれない。やはり陰りがある。そうした様々なものがこの上ないほどに形式の中に完成されている。まさに目の前に多感で知的で育ちの良い天才少年がいるかのようだ。しかも、素晴らしい演奏。今、目の前で音楽が作られていくかのように新鮮で生き生きしている。
私は特に第10番が好きだ。次々と美しいメロディが湧き出てきて、それがまとまりをもって徐々に形を成し、大きなドラマを作っていく。多感な生命体が走っているかのようだ。第11番も素晴らしかった。ここれはまさに本格的なシンフォニー。フーガ風の展開をしばしば見せ、のちの「フィンガルの洞窟」や交響曲を思わせるような部分もある。大人になってからの余計なものがない分、音楽自体の素晴らしさのようなものも感じる。鈴木の指揮も、ロマンティックすぎず、かといって古典派風でもなく、実に見事にメンデルスゾーンの音楽をかぎ分けて展開していく。堪能した。
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