ウルバンスキ&東響の「カルミナ・ブラーナ」 生命が炸裂した!
2021年11月13日、サントリーホールで、東京交響楽団定期演奏会を聴いた、指揮はクシシュトフ・ウルバンスキ。曲目は、 前半に、弓新が加わって、シマノフスキのヴァイオリン協奏曲第1番、後半にオルフ作曲の大曲「カルミナ・ブラーナ」。新型コロナにかかわる入国制限のために、大幅に出演者が変更になったが、素晴らしい演奏会だった。興奮した。
シマノフスキの協奏曲は、色彩豊かな夢の国に迷い込んだかのようにして始まる。映画の中で幽霊が出るときにかかるような横笛の音を思わせるヴァイオリンの音。弓のヴァイオリンがそうした雰囲気を掻き立てる。しかし、きわめて知的な構築だと思う。情緒に流されず、客観的にヴィヴィッドな切れの良い音によって官能的な世界を作っていく。そうであるだけにいっそう造形が明確で、幻想的な世界がリアルに迫る。
弓新というヴァイオリニスト。存在は知っていたが、初めて聴いた。素晴らしいヴァイオリニストだと思う。
「カルミナ・ブラーナ」はそれ以上に素晴らしかった。興奮した。
この曲は、アクセントを強めて、もっとどたばたと演奏することもできる。私はそんな演奏も嫌いではない。だが、ウルバンスキはかなり室内楽的に、繊細に演奏する。もちろん、冒頭などはかなり強烈な音を出す。しかし、全体的には音が団子状になることなく、あくまでも透明な音で進めていく。力任せに突き進むのではなく、音楽のニュアンスを大事にして、徐々に高揚させていく。そうであるだけに、音楽が立体的になり、一筋縄でいかなくなる。一層豊かな世界が現れる。そのようなウルバンスキの指示を的確に音にする東京交響楽団も素晴らしい。音が決して濁らない。打楽器の音もびしりと決まる。
冨平恭平合唱指揮による新国立劇場合唱団も素晴らしかった。しなやかで立体的。ユーモアにあふれていながらもこの上なく真摯な「カルミナ・ブラーナ」の世界を描き出していた。長谷川久恵合唱指揮による東京少年少女合唱隊も見事。
そして、独唱陣も見事。来日予定だった外国人勢にまったく引けを取らないと思う。町英和は柔らかい素直な声が素晴らしい。初めのうち、少し声量的に弱いかと思ったが、そんなことはなかった。伸びのある美しい声。カウンターテナーの彌勒忠史もおどけた歌をうまく歌って見事。そして何よりも私は盛田麻央の潤いのある柔らかい美声にうっとりした。
鮮明で生命力にあふれた、豊かな「カルミナ・ブラーナ」だった。魂が震えた。最高潮になって「おお運命よ」の大合唱になって生命が炸裂して終わった。
なんと素晴らしい音楽なのだろうと思った。そして、ウルバンスキはすでに大巨匠だと思った。
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