ウルバンスキ&東響のブラームス第4番 官能的と言えるほど繊細でとろける冒頭
2021年11月6日、ミューザ川崎シンフォニーホールで東京交響楽団のコンサートを聴いた。指揮はクシシュトフ・ウルバンスキ。曲目は、前半にモーツァルトの「魔笛」序曲と、児玉麻里が加わって、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番、後半にブラームスの交響曲第4番。
ウルバンスキは以前、一度だけ聴いた記憶がある。ショスタコーヴィチの交響曲だったが、切れがよく鮮烈だった。期待して出かけた。
今回も、まず「魔笛」序曲のういういしい音楽に驚いた。弦の音がしなやかで繊細で、しかも生き生きとしている。そして、細かいニュアンスを付けながら音楽を進め、後半に音楽を大きく盛り上げていく。ドラマティックに音楽が展開する。
ベートーヴェンの協奏曲については、もしかしたら私の席(正面の前から3列目)がピアノの反射板の真ん前であるせいかもしれないが、妙にピアノの音が硬く、潤いのようなものがあまり感じられないのが残念だった。私は、児玉麻里のピアノは、確か連弾しか聴いたことがないような気がする(しかも、ピアノに疎い私は、連弾で演奏されると、どの音をどの奏者がだしているのか、まったく区別がつかない!)ので、これが本来の音なのかどうか、判断できない。私にはオーケストラの柔らかい音とピアノの硬い音がうまく溶け合わないのを感じた。ただ、それでも第3楽章にいたっては、祝祭的になって、硬めの音が気にならなくなった。むしろ輪郭がはっきりして弾むようなリズムが心地よかった。
私の目当てはブラームスの交響曲第4番。クラリネット五重奏曲とともにブラームス作品の中で最も好きな曲だ。
官能的とさえいえるような繊細でとろけるような出だしだった。まるで愛に悶えるように音楽が深まっていく。私は「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲の雰囲気を思い出した。一般にはブラームスの枯淡と諦観の音楽とされているものが、まるで愛の悶えのようにさえ思えた。第1楽章はこうして繊細に美しく、揺れ動きながら音楽は進んでゆき、深く沈潜し、大きく躍動し、劇的な炎になって終わった。第二楽章はスローテンポでじっくりじっくり音色を重ねていく。私のようなせっかちな人間は、途中、ちょっと息切れがしかけたが、これはこれで見事な造形だと思う。第1楽章でいったん燃え上がった感情がここで再び沈潜し、深まっていく。
そして、第3楽章でスケール大きく音楽が高まる。私は斜め前の男性客がパンフレットをいじったり、演奏中にアンケートを書いたり、指揮の真似をしたりして視覚的にうるさいので目をつむって聴いていたら、突然、地響きがしてびっくり。何かと思ったら、ウルバンスキが指揮台に足を大きな音を立てて踏み下ろしていた! 音楽もそれに呼応して大きく盛り上がる。そして、第4楽章でパッサカリアがいっそう盛り上がって宇宙的と言ってよいような大クライマックスになった。まさに一つの世界を作り上げていた。きわめて知的に構築され、しかも感情的に盛り上がっている。素晴らしい演奏と思った。東響も指揮者の要求にこたえて、妙なる音を作り出している。木管楽器の美しさも格別だった。
とても感動して会場を後にした。
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