東京二期会「こうもり」を楽しんだ
2021年11月27日、日生劇場で東京二期会公演、ヨハン・シュトラウスII世のオペレッタ「こうもり」をみた。歌の部分はドイツ語、台詞部分は日本語。オペレッタにはこのようなあり方が好ましいと私は思う。
私はワーグナー好きなので、友人たちからは意外に思われるが、実は高校生のころ、カラヤン&フィルハーモニア管弦楽団のレコードを聴いて以来(ということはつまり55年くらい前から)、「こうもり」が大好き。一時期、ありったけのCDを買って聴き比べていたが、今でも公演があるとついみたくなる。同じアンドレアス・ホモキ演出の東京二期会公演を2017年にもみた記憶があるが、やはりまたみたくなった。
指揮は川瀬賢太郎、オーケストラは東京交響楽団。2017年に観たときは阪哲朗指揮の東フィルだったと思うが、それよりもずっと躍動感があり、アンサンブルも美しかった。ただ、アデーレのアリアの部分などで、ほんの少し歌と合わないところがあるような気がしたが私の耳のせいだったか。
第一幕の最初から、幕切れまでずっと同じ場所で演じられる。オルロフスキーはどうやらファルケが雇った役者らしいことがほのめかされる。最後、すべてが終わった後、最初の場面に戻るので、「すべては一夜の妄想だった」という設定なのかもしれない。かなりカットがあったようで、全体を二幕に改めた形になっている。が、特に違和感はなく、とても楽しめた。
歌手に関しても全体的に高いレベルでそろっていた。アイゼンシュタインの又吉秀樹は声量もあり、歌いまわしもうまい。そして何より喜劇役者ぶりに脱帽。この人の姿かたちと動きをみていると、往年のフランスの映画俳優レイモン・コルディ(『自由を我等に』でルイを演じた俳優)にそっくりだと思う。本人は意識していないのだろうか??
ファルケの宮本益光も知的な雰囲気をうまく演じて声も確か。フランクの斉木健詞もとてもいい。アルフレードの澤原行正は少し音程が怪しかった。
女性歌手では、ロザリンデの幸田浩子は気品があり、声も美しい。アデーレの高橋維もきれいな声で、特に高音が見事。そして、オルロフスキーの郷家暁子はこの不思議な役をしっかりした声で見事に演じていた。
日本人のオペラ歌手も演技がうまくなったことに改めて驚く。私がオペラを観始めたころ、すなわち1970年代の歌手たちの演技レベルは今から考えると学芸会レベルだったとつくづく思う。一つ間違うと下品になってしまうこのオペレッタを気品を保ちながら演じている。
フロッシュを演じたのは森公美子。フロッシュという役を逸脱して森公美子としてのトークがアドリブ(?)でたくさん入った。テレビでよく知られている人なだけに、大いにウケていたが、私は「こうもり」を観に行ったのであって、森公美子ショーを観に行ったわけではなかったので、あまり愉快ではなかった。オペレッタなのだから堅いことは言いたくないが、やはりフロッシュの役からは逸脱してほしくない。逸脱すると、せっかく保ってきた大人の娯楽としての品位を落としてしまうと思う。
とはいえ、今年はめでたく「こうもり」を味わうことができた。ありがたいことだ。
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