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デスピノーサ&N響 「浄夜」 何度か感動に震えた

 2021124日、東京芸術劇場 でNHK交響楽団演奏会を聴いた。指揮はガエタノ・デスピノーサ、曲目は前半にブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」作品56aと、小林海都が加わってバルトークのピアノ協奏曲 第3番、後半にシェーンベルクの「浄められた夜」。

 とはいえ、実はチケットを購入した時には、山田和樹の指揮で佐々木典子のソプラノによる「四つの最後の歌」が予定されていた。ところが、新型コロナウイルスの影響で演奏者も曲目も変更。「四つの最後の歌」を目当てだった私としては大いに落胆し、実は行こうか行くまいかと迷っていたのだった。

 だが、実際に聞いてみると、とても良い演奏だった。デスピノーサという指揮者、私はたぶん初めて聴いたと思う。音楽にさりげなく陰影をつけ、しかも自然に音楽が流れていく。ブラームスの変奏曲も、変奏ごとに見事に聴きどころを際立たせてくれる。全体が一つのドラマのように起伏を持っていることがとてもよくわかる演奏だった。

 バルトークの協奏曲については、私はこの曲をよく知らないので、何かを語る資格はない。ただ、小林海都という若いピアニスト、とても魅力的な音色の持ち主だと思った。一つ一つの音になんだか芯があるような印象を持った。そのため、一つのメロディが新しい響きを持って聞こえる。ピアノのアンコールが演奏された。シューベルトのアレグレットD915だという。帰宅して、所有しているだけでおそらく一度も聴いていないCDを引っ張り出して聴いてみた。シピリアン・カツァリスの演奏だが、まったく印象が異なる。小林の音はもっとずっと現代的に聞こえた。現代的でありながら不思議な陰影と哀愁を持つ曲に思えた。

「浄夜」も素晴らしい名演奏だった。N響の弦のメンバーの実力が存分に発揮されたといっていいだろう。心の中に蠢く官能と悶えと歓びがうねる。デスピノーサのコントロールも見事。音が自然に重なり、うねり、ささやく。魂の潮が押し寄せてはまた静まり、また押し寄せる。昔々(おそらく、40年ほど前)、まだレコードの時代、この曲のオーケストラ版が好きでよく聴いていたが、この2、30年、六重奏版ばかりを聴いていた気がする。久しぶりにオーケストラ版を聴くと、それぞれの楽器のソロが胸のざわめきのようなものを掻き立て、六重奏版とは異なった魅力があるのに気付く。迫ってくるものがあった。N響弦楽器群のメンバー、そしてそれぞれの楽器のトップの独奏陣に脱帽。何度か感動に震えた。

 客はかなり少なかった。真ん中のブロックはほぼ埋まっていたが、左右のブロックはガラガラ。演奏者と曲目の変更のせいもあったのかもしれない。私も、行こうかどうかと迷って、せっかくの名演奏を聞き逃すところだった。短気を起こさなくてよかった。

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