デスピノーサ&N響 「展覧会の絵」 繊細に絵を描き分けている!
2021年12月10日、東京芸術劇場 コンサートホールでNHK交響楽団の演奏会を聴いた。指揮はガエタノ・デスピノーサ。曲目はチェロの佐藤晴真が加わって、チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲 作品33」とムソルグスキー(ラヴェル編)の組曲「展覧会の絵」。休憩なし。
当初の予定では同じ曲目をワシーリ・ペトレンコの指揮、ダニエル・ミュラー・ショットによる演奏ということになっていたが、新型コロナ ウイルスによる外国人の入国制限のために変更。私の好みの曲ではないが、ダニエル・ミュラー・ショットを聴いてみたいと思って購入したのだった。チェリストが代わってしまったら、あまり聴きたいという意欲がなくなって、あまり気のりせずに聴きに出かけた。が、結果的にはとてもよかった。
デスピノーサという指揮者、素晴らしいと思う(この人の顔、誰かに似ているとずっと思っていたのだったが、やっと思い出した。ブルガリア出身の元大関・琴欧州によく似ている!)。無理をせず、しなやかに音楽を盛り上げ、自然にニュアンスを豊かにしていく。しかし、時に激しく音楽を動かす。それがびしりと決まる。
チェロの佐藤もふくよかでのびのびしていて、これもとてもよかった。縮こまらずに朗々とロココ風の主題と、いかにもチャイコフスキー風の戦慄を奏でる。音程もすごく良くて音も美しい。アンコールは「鳥の歌」。
「展覧会の絵」は、私が実演を聴くのはたぶん、二度目か三度目くらい。記憶が定かではないのだが、40年ほど前だろうか、チェリビダッケの指揮で聴いて驚嘆したことがあるような気がする。そんなわけで、実はよく知っている曲ではない。
デスピノーサの語り口が実にうまい。一つ一つの「絵」を巧みに描き分けていく。繊細だったり、大胆だったり。それがことごとくぴたりと音楽の展開にはまっていく。N響の音も実に美しい。明るい音色で、ヌケがよく、繊細で時に華麗な音が出てくる。
それにしてもラヴェル編曲の巧みさに舌を巻く。ピアノ版の演奏も何度か聴いたことがあるが、ラヴェル編曲のオーケストラ版と雰囲気が異なる。ムソルグスキーのオリジナルのピアノ曲は、不器用でいびつで素朴で、しかし鬼気迫るものがあるのに対して、オーケストラ版は華麗でしなやかで洗練されている。まさにラヴェルが自分の曲にしてしまっているところがある。
そのラヴェルのオーケストレーションをデスピノーサが理想通りの音にしていく。「キエフの門」のところでは、壮麗な光景が目に見える気がして、感動に震えた。N響の実力が十分に発揮された。
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