鈴木秀美&新日フィルの第九 すべての音に勢いがある
2021年12月18日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で「第九」特別演奏会を聴いた。
当初、指揮はシモーネ・ヤングが予定されていたが、新型コロナウイルスのオミクロン株感染拡大に伴う外国人の入国停止措置の影響で、鈴木秀美に変更になった。ヤングの指揮を聴きたかったが、やむを得ない。鈴木秀美は大好きな指揮者なので、それはそれでとてもうれしい。
曲目は前半に序曲「レオノーレ」第3番、休憩後にベートーヴェンの交響曲第9番。
「レオノーレ」の前半は、客席がしっかりと落ち着いていない影響もあってか、少しバタバタした感じだったが、後半からはぐいぐいと音楽が推進していった。緊迫感にあふれる名演になった。
第九は素晴らしかった。ただ、これも時々オーケストラが乱れるところはあったが、それでもすぐに立て直されたし、小さなことは気にならないほどに大きな音楽のうねりができた。かなり古楽器風の演奏と言ってよいのだろう。朗々と音楽が引き伸ばされるのではなく、むしろ勢いのある音の重なりによって音楽が展開していく。
第1楽章が特に素晴らしいと思った。音の一つ一つが生きているのを感じる。ちょっと前のめりの感じで音楽が進む。一般的な演奏よりも、ほんの少しフレーズの出だしが早いのかもしれない。それがいっそう緊迫感を生む。楽器の音の重なりが力感にあふれている。ベートーヴェンに切羽詰まった精神的な苦悩が目の前に迫り、まさに苦悩そのものを追体験している気がした。それが第3楽章で昇華されていくのもしっかりと感じられた。
第4楽章もよかった。独唱は森谷真理、中島郁子、福井敬、萩原潤。本当に日本の歌手陣は第九がうまくなった!とつくづく思う。4人ともしっかりした音程の美しい声。合唱は二期会合唱団だったが、30人程度であるせいか、少し声の迫力が不足している気がした。
一昨日、兄上である鈴木雅明指揮によるBCJの第九を聴いたのだったが、もしかしたら、演奏の完成度としては、BCJのほうが上だったかもしれないが、私は、現代楽器に慣れているせいか、今日のほうにいっそう感動した。今日は、一昨日のような耳慣れないメロディもなく、これまで親しんだ通りの演奏だった。特に目新しい解釈はないと思う。しかし、すべての音に勢いがあり、非常に理詰めに音楽が進んでいくので、ワクワクするような気持になっていく。そして、最後には歓びが爆発する。
繰り返すが、シモーネ・ヤングの指揮する新日フィルを聴けなかったのは残念だが、鈴木秀美の第九を聴けて満足だった。
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