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ロッシーニのオペラ映像「イタリアのトルコ人」「シジスモンド」「イギリスの女王エリザベス」「トルヴァルドとドルリスカ」

 正月明けの新型コロナウイルスの感染拡大の勢いが止まらない。オミクロン株は軽症で済むことが多いようだが、今の規定では感染していると、ほかの病気で治療が必要でも病院に受け入れてもらえない。濃厚接触者は出勤停止になる。多くの人がそのような目に合うと、社会は大打撃だ。一刻も早いコロナ就職を祈るしかない。

 本日の午後、悲しいニュースを知った。岩波ホールが閉館になるという。最終決定なのだろうか。私の青春は岩波ホールとともにあったといってもそれほど誇張にはならない。サタジット・レイの三部作をはじめ、1970年以降、多くの映画を岩波ホールでみて、感動に満たされてきた。一般の映画館ではみられない、静かな感動を呼ぶ映画をたくさん企画してくれたのがこのホールだった。これからもずっと世界の佳作を上映してくれるものと思っていただけに、とても悲しい。閉鎖決定を覆すことはもうできないのだろうか・・・。

 正月中、ロッシーニのオペラ映像を時代順にみかえしていた。簡単に感想を記す。

 

「イタリアのトルコ人」  2002年 チューリヒ歌劇場

 2002年の映像。特筆するべきは、やはりフィオリッラを歌うチェチーリア・バルトリ。圧倒的な歌唱。トルコ人を歌うのはルッジェーロ・ライモンディ。痛々しいほどに声が出ないが、存在感はさすが。この役はこれで乗り切れる。そのほかの歌手陣もとても素晴らしい。指揮はフランツ・ヴェルザー=メスト。この人らしい、ツボを得たしっかりした演奏なのだが、やはりこの頃流行しているロッシーニ演奏に慣れた耳からすると、ちょっと平坦すぎる気がする。もっとアクセントを強めて躍動感を強調してもよいのではないかという気がする。

 浮気女が最後には改心する話だが、男である私としては、この浮気女に感情移入して楽しむ気になれないのが残念。男の性(さが)というべきか、浮気男の話だったら、それはそれで十分に感情移入してみることができるのだが。詩人が登場して狂言回しの役をするというこのオペラのつくりも、まるでピランデッロ劇のようで斬新だが、なぜこのような必要があったのか、少々疑問に思う。

 もちろんロッシーニらしさがふんだんにあって、とても楽しめるのだが、ロッシーニのオペラとしては特に傑作とは言えないのではないかと思った。

 

ロッシーニ 「シジスモンド」ペーザロ・ロッシーニ音楽祭2010

 この映像の演出にもよるのかもしれないが、やはりおもしろいオペラとは言えないだろう。部下の陰謀で、愛する妻の不貞を疑って処刑してしまったと信じている王の前に、妻とそっくりの女が現れる・・・というところはおもしろいのだが、ありえない設定であるうえ、多くの人がたやすくだまされるので、少々イライラし、しかもなかなか話が進まない。

 とはいえ、演奏面ではこの上演はきわめて充実している。シジスモンドのダニエラ・バルチェッローナはみごとに神経症の王を歌う。そして、何よりもアルディミーラのオルガ・ペレチャツコが可憐で健気で美しい。悪役ラディスラオをアントニーノ・シラグーサが歌うが、この硬質な声によく似あう。ミケーレ・マリオッティの指揮するボローニャ・テアトロ・コムナーレ管弦楽団も素晴らしい。序曲から圧倒的な力演。

 演出はダミアーノ・ミキエレット。最初から最後まで現代の精神病室を舞台にしている。精神を病んだ人々が黙役で大勢登場して動き回る。シジスモンドに見えているはずの亡霊の姿も見える。だが、あまりに安易な設定だと私は思う。病んだ人々の動きも鬱陶しく、退屈に思えた。

 

ロッシーニ 「イギリス女王エリザベス」201510月 サッサリ、コムナーレ劇場

 2015年の録音・録画のはずだが、異様に音がよくない。こもった感じがする。

 フェデリコ・フェッリ指揮の「マリアリーザ・デ・カロリス」コンサート協会管弦楽団も薄っぺらな音を出すので、安心して聴いていられない。どんな指揮者、どんなオーケストラなのか私はよく知らない。

 それに比べれば、歌手陣は健闘している。エリザベッタのシルヴィア・ダッラ・ベネッタはきれいな声でしっかりと歌う。レイチェステルのアレッサンドロ・リベラトーレも低音は少し弱いが、全体的にきれいな声。そのほかの歌手たちも悪くない。だが、オーケストラが頼りないとどうにもならない。

 演出はマルコ・スパダ。現代の服装で、かなり簡素な舞台。現在のエリザベス1世を意識した服装なのかもしれない。

 

ロッシーニ 「トルヴァルドとドルリスカ」20068月、ペーザロ・ロッシーニ・フェスティヴァル

 久しぶりにこの映像をみた。最初にみたとき、まだロッシーニのオペラ・セーリアはほとんどみたことがなかったので、衝撃を受けた。改めてみて、やはりとてもいい上演だと思う。

 トルヴァルドを歌うのはフランチェスコ・メーリ。高貴な声で凛々しくしなやかに歌う。容姿も含めてこの役にふさわしい。ドルリスカのダリーナ・タコヴァも安定している。あと少しの可憐さがほしいが、ないものねだりをしても仕方がない。悪役オルドウ公爵を歌う ミケーレ・ペルトゥージはいかにも悪漢でなかなかよろしい。善人ジョルジオのブルーノ・プラティコもよい味を出している。

 ヴィクトール・バプロ・ペレス指揮のボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団はちょっともたつき気味で、音がこもりがちな気がするが、これは録音のせいだろうか。演出はマーリオ・マルトーニ。わかりやすくてきれいな演出だと思う。

 それにしても、トルヴァルドはフロレスタン、ドルリスカはレオノーレ、公爵はドン・ピツァロ、ジョルジオはロッコと重なる。意識的なのだろうか、それとも時代的にそのような劇が流行していたのだろうか。

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