« 反田恭平「ポーランド幻想曲」  強靭で柔らかく躍動感にあふれたピアノ | トップページ | 服部百音 ロマンティックな精神が乗り移ったようなブルッフ演奏 »

辻井伸行演奏の三枝成彰作曲のピアノ協奏曲の初演に驚嘆!

 2022117日、サントリーホールで「三枝成彰 80歳コンサート」を聴いた。演奏は大友直人の指揮、東京フィルハーモニー交響楽団。曲目は前半に、露木茂のナレーション、三枝成彰傘寿記念混声合唱団(合唱指揮:初谷敬史)が加わって、「最後の手紙~The Last Message」(混声合唱版初演)、後半に辻井伸行のピアノが加わってピアノ協奏曲~辻井伸行委嘱作品(世界初演)。

「最後の手紙」を聴くのは、3度目だと思う。戦争で亡くなった13人の最後の手紙による管弦楽付き合唱曲だ。これまでの2度は六本木男声合唱団の演奏で聴いた。今回は女声が加わっていっそう戦争の嘆き、哀しみが伝わる。ただ、今回、字幕が出たので何とか詞を理解できたが、女声では聞き取れないところが多かった。これまで男声で聴いてそのような記憶はないので、男性の方が聴きとりやすいのだと思う。

 とはいえ、やはりこれは名曲だと思う。ひとりひとりの無念、残してきた家族への愛情が伝わる。

 後半のピアノ協奏曲は、私は稀代の傑作だと思った。まず、あまりの疾風怒濤ぶりにびっくり。辻井さんの委嘱による曲だというので、もっと穏やかで抒情的な曲だとばかり思っていたら、冒頭から大太鼓などの打楽器が大活躍し、ピアノも最後の最後をのぞいて、猛烈な勢いで弾きまくる。プロコフィエフやラフマニノフやバルトークのピアノパートよりももっと激しく技巧的なのではないか。心の中の疾風怒濤、それに打ち勝とうとする意志のような音楽とでもいうか。そして、最後の最後で穏やかでシンプルな楽想になる。この部分は、通常のピアノではなく、ピアノの反対側に据えられたトイピアノ(?)によって演奏。辻井さんがピアノを学ぶきっかけになったお母様に与えられたおもちゃのピアノを模しているのだという。このシンプルで美しいメロディも素晴らしい。

 私は現代曲をあまり聴かないので、批評めいたことは言えないが、ともあれ、私が現代のピアノ協奏曲でこんなに感動したのは初めてだった。素晴らしい曲だと思った。そして、辻井さんのテクニックもすさまじいと思った。目が不自由なのに、これほどの難曲をどのようにして暗譜したのだろう。これを暗譜し、これだけ弾きこなすこと自体、とてつもない才能だと思う。スタンディングオベーションが起こった。私ももちろん立ち上がって拍手喝采した。

|

« 反田恭平「ポーランド幻想曲」  強靭で柔らかく躍動感にあふれたピアノ | トップページ | 服部百音 ロマンティックな精神が乗り移ったようなブルッフ演奏 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 反田恭平「ポーランド幻想曲」  強靭で柔らかく躍動感にあふれたピアノ | トップページ | 服部百音 ロマンティックな精神が乗り移ったようなブルッフ演奏 »