スダーン&上村&東響 サン=サーンスの豊穣な音楽に酔った
2022年1月22日、ミューザ川崎シンフォニーホールで東京交響楽団の定期公演を聴いた。指揮はユベール・スダーン。曲目は前半に上村文乃のチェロが加わって、サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番、後半に大木麻理のオルガンが加わってサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」。
私がこのコンサートのチケットを購入した際には、ピエール・ブリューズの指揮、ユリア・ハーゲンのチェロが予定されていたが、今回もまた、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外国人入国制限のために出演者変更。
上村文乃はまさに音楽にとりつかれたかのような演奏。音楽の表情がそのまま顔に現れ、音楽に没入する。私は真正面の2列目で聴いたが、一度、上村が顔をゆがめてむせび泣くような声を出したので驚いていると、その後、激しい悲しみを表現する音楽が聞こえてきた。そのようにして音楽が展開していくが、音楽にのめりこんでいるだけでなく、しっかりと全体を見渡したうえでの感情移入であることがよくわかる。とてもいい演奏だった。
この曲を聴くのは久しぶりだ。確かめてみたら、2013年のラ・フォル・ジュルネで宮田大のソロで聴いて以来。昔、ロストロポーヴィチのレコードをよく聴いていた。サン=サーンスらしい、技巧的な奏法を駆使して、構成もしっかりしており、豊饒な音が響く。素晴らしい曲だと改めて思った。
無伴奏チェロのアンコールがあったが、私は何の曲か知らない。技巧を駆使した現代曲(あとで、藤倉大の「SweetSuites」だと知った)。楽しめた。
交響曲第3番もとても良い演奏だった。スダーンはこの華麗な曲をうまく整理して聴かせてくれた。特に強く団員を統率しているようには見えない。きっと団員は気持ちよく演奏しているのだろう。しかし、自然にまとまりができて、しっかりした音が聞こえてくる。余計なものが一切なく、こけおどしもない。芯のある音を出しながら、それが豊穣な音楽になっていく。この曲は一つ間違うと、野放図でとりとめのない音楽になっていくが、そんなことはない。最後まで求心的な豊饒さだった。私は何度か豊饒な音にしびれた。東響の音も素晴らしいと思った。
サン=サーンスは実はとても好きな作曲家で、昔からよくレコードやCDを聴いていた、そういえば、このごろあまり聴かなくなった。今年は没後100年。機会を見つけてもっと聴きたいものだ。
アンコールは「ホフマンの舟歌」。香りのある美しい演奏だった。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- ヴァン・カイック弦楽四重奏団 音楽そのものの醍醐味!(2026.10.09)
- 新国立劇場「イタリアのトルコ人」 演出の工夫に感心!(2026.10.07)
- カルテット・アマービレ&今井信子のブラームスの感動!(2026.10.06)
- 濱田芳通&アントネッロの「マタイ受難曲」 ドラマティックな人間ドラマ・群衆ドラマ!(2026.10.04)
- オペラ映像「ラ・ボエーム」「ナブッコ」「ドン・パスクヮーレ」「ばらの騎士」(2026.09.24)

コメント