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メルベートに歌唱に圧倒された

 2022410日、飛行船シアター(旧 上野学園石橋メモリアルホール)で、リカルダ・メルベートのコンサートを聴いた。東京春音楽祭の一環。ピアノ伴奏はフリードリヒ・ズッケル。私はこれまで、ベートーヴェンやワーグナーやシュトラウスの実演や録音、映像でメルベートに接してきた。容姿も魅力的で、私のひいきの歌手の一人だ。楽しみにして出かけた。期待通りの素晴らしい歌唱だった。

 曲目は、前半に、モーツァルト「魔笛」より「愛の喜びは露と消え」、ワーグナーの「ローエングリン」より「エルザの夢」、「さまよえるオランダ人」より「ゼンタのバラード」、「トリスタンとイゾルデ」より「愛の死」、後半にモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」より「私に言わないでください 私の美しいあこがれの人よ」、リヒャルト・シュトラウスの「エジプトのヘレナ」より「第二の新婚初夜!魅惑的な夜」、「エレクトラ」より「モノローグ」、最後にワーグナーの「神々の黄昏」より「ブリュンヒルデの自己犠牲」。アンコールはシュトラウスの「献呈」。

 前半は少し声のコントロールが甘かったと思う。だが、ゼンタのバラードあたりから、どんどんと声が出るようになった。

 音程がよく、言葉のニュアンスもしっかり伝わる。しかも、力任せに歌うのでなく、とても知的。だから、モーツァルトもとても美しい。だが、やはりワーグナーやシュトラウスのほうが、この人の声に合っていると思う。けっして太い声ではないが、強靭で張りがある。ダイナミックレンジが広いというか、小さな声から力強い声まで自在に声を出すので、声の広がりに圧倒される。私はイゾルデとエレクトラにとりわけ感動した。

 イゾルデは、まさに宇宙的な広がりを持っていた。残念ながら、空席がかなり目立ったが、ホール全体が無限の広がりを持ったように思えた。エレクトラも、知的で可愛らしさを持った役柄をしっかりと歌ってとても迫力があった。

 ただ、私はピアノ伴奏のズッケルについて少々疑問を抱いた。オーケストラで聴きなれているこれらの音楽をピアノで演奏すのだから仕方がないとはいえ、全体が流動的にならずに、ぶつ切れになっているような印象を受けた。そのために、ワーグナー特有の夢幻的な雰囲気が生まれてこない。

 とはいえ、とても感動。アンコールの後はスタンディング・オーベーションになった。

 

 

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