アイヒェとベルナーによる「マゲローネのロマンス」 音楽は最高!
2022年4月11日、東京文化会館小ホールで、マルクス・アイヒェ(バリトン)によるブラームス作曲、ティークの「マゲローネ」によるロマンスを聴いた。ピアノ伴奏はクリストフ・ベルナー、朗読は奥田瑛二。
めったに演奏されない曲だが、私は、LP時代にフィッシャー=ディスカウとリヒテルの録音を聴いて感動して以来、この連作歌曲が大好きだ。若々しくて率直なブラームスの一面が現れていると思う。
アイヒェのバリトンは最高だった。豊かなバリトンの美声で、音程はいいし、発音も美しい。若々しくて伸びと張りのある美声。この曲にふさわしい。そして、歌いまわしもしなやか。申し分ない。勢いのある歌声が最後までまったく衰えず、素晴らしかった。
ベルナーのピアノはかなり癖があると思った。素晴らしくいいところも多いのだが、ちょっと自己本位な感じで、勢いに乗ると歌手にきちんと寄り添うのをやめて、自分の世界に入る傾向があるのを感じた。それも一つの魅力なのかもしれないし、実際、それがズバリと決まって感動するところもあるのだが、歌と少しずれるのを感じるところもあった。とはいえ、音楽的には最高。
私が少し問題を感じたのは、奥田瑛二の担当した朗読だった。私はこの歌曲を、他愛のない童話に基づくものだと思っている。だから、中世の童話ふうにあっけらかんと朗読するべきだと思うのだ。ところが、今回の朗読の訳語は童話らしくなく、かなり難しい言葉が使われ、奥田の朗読もかなり近代小説風。つまり、しばしばリアルに表現しようとする。ありそうもない童話をリアルに演じると、歌とかみ合わなくなってしまう。
いや、そもそも、長い長い日本語の朗読が歌の間に入ると、ドイツ語の音楽の流れが途切れてしまう。しかも、日本語の朗読なので、演奏者たちには理解できず、朗読の世界から歌の世界にスムーズに流れない。私は、いっそのこと、朗読はカットして大まかなストーリーだけを解説するほうが良いのではないかと思う。
もちろん、奥田はこの曲に思い入れがあるわけではなく、単に仕事として受けただけだと思う(アンコールの際の、曲の紹介の仕方などから考えて、どうやら奥田さんはクラシック音楽に興味のある方ではなさそう)ので、それを責めることはできないが、少しこの曲における朗読のあり方について考えなおすべきだと思った。
アンコールはベートーヴェンの歌曲「接吻」、シューベルトの歌曲「ミューズの子」「楽に寄す」。いずれも、音楽の楽しさを前面に押し出す名曲。二人の音楽がぴたりと合って、音楽の楽しさを堪能できた。
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