映画「メイド・イン・バングラデシュ」 まっすぐな映画!
岩波ホールで、バングラデシュの女性の奮闘を描く映画「メイド・イン・バングラデシュ」をみた。監督はルバイヤット・ホセイン。
繊維縫製工場で働く若い女性シンは、あまりに悲惨で不当な労働状況に疑問を抱き、様々な妨害や無理解をはねのけて労働組合を作る。それだけの話。
予告編を見て、これまで何度も見てきた女工哀史もの、組合ものに思えて、きっとつまらないだろうと思ったが、ネットでみると評価が高いので、ともあれ、みてみた。岩波ホールとしては、近年、稀に見るほどの大勢の観客だった。で、結局、映画はどうだったかと言うと、やはりつまらなかった。
これまでみてきたこのタイプの映画とさほど変わりがない。まあ、要するに、資本家の側はみんなが権力的な悪い奴ら。資本家側は権力と結託して、労働組合結成を妨害し、男たちも、そして男社会を当然として生きている女性たちも、シンの活動の足を引っ張る。が、策略を用いて、組合結成を勝ち取る。ただ、その策略がおもしろいかと言うと、それもあまりに安易。
ただ、現在、日本でこのようなものを作るとすれば、きっと喜劇的要素を増やしたり、大胆な策略を呼びものにするなど、もっとひねった展開にするだろうところを、まっすぐに表現しているところはある意味、新鮮だと思った。逆にいえば、バングラデシュはまっすぐにこれを描かなければならないほどに深刻な社会だということだろう。
日本の衣料は、間違いなく、このような途上国の女性たちの安い賃金での奴隷的な労働によって成り立っている。私たちが、安く様々なものを入手できるのは、このような奴隷的な労働のおかげだということを、認識せざるを得ない。
あまり面白い映画だとは思わなかったが、ダッカの状況を見られたことはとてもうれしい。30年近く前だったと思う。カメラマンだった伯父が仕事でバングラデシュをしばらく訪れたことがある。その印象を聞いたら、叔父は即座に、「この世の地獄だった」といった。
この映画をみる限り、現在のバングラデシュは「地獄」ではなさそうだが、かなり深刻な社会であることは、インフラの状況などからも想像がつく。何はともあれ、コロナが終息したら、バングラデシュにも行ってみたいものだと思った。
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