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Youtube出演のこと、そしてオペラ映像「パルジファル」「シベリア」

 先ごろ、縁あって、春風亭昇吉師匠のYouTubeに出演させていただいた。昇吉師匠は東大出身の落語家・真打として有名な方だ。拙著『「嫌い」の感情が人を成長させる』(さくら舎)についてお話しさせていただいた。つまらぬことを言ってしまったり、大事なことを思い出さなかったりと、あれこれ不備はあるが、私のしゃべりはこんなもの。拙著について思いを語っているので、よろしかったらご覧になっていただきたい。昇吉師匠の知性と話術も堪能できるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=tjUH2kP8t6Q

 

 オペラ映像を2本みたので、感想を記す。

 

ワーグナー 「パルジファル」2020126日 パレルモ、マッシモ劇場

 2020年の上演だが、客は入っているようだ。シチリア島のパレルモの歌劇場での「パルジファル」だというので、あまり期待しないでみたのだったが、悪くない。いや、とてもいい。

 歌手陣は、バイロイト常連というような有名歌手たちではないが、十分に世界最高レベルと言って間違いないだろう。特に素晴らしいのは、グルネマンツを歌うジョン・レリエ。ゆとりのある深い声で、この役にふさわしい。アンフォルタスのトマス・トマソンも、強い声で能弁に歌う。なかなかいい。クリングゾルのトーマス・ガゼリも複雑な役をうまく造形して、声もしっかりしている。

 クンドリのキャサリン・フーノルトもこの二重性のある役をきちんとこなしている。パルジファルはダニエル・キルヒ。悪くはないのだが、ちょっと声がかすれるところがある。ただ信じられないほど声が出ていないのが、ティトゥレルのアレクセイ・タノヴィツキ。ほんの少ししか歌わないので、気にしなければいいのだが、アンフォルタスの父親という大事な役がこれほど音程がふらつき、声が出ていないのでは興ざめだ。風邪でもひいていたのだろうか。ただ、この歌手、前にも同じような印象を抱いたことがあった気がする。

 指揮はオメール・メイア・ヴェルバー。初めてこの指揮者の演奏を聴いたと思う。イスラエル出身だという。中東系の顔立ちに見える。精緻でしなやかに音を出すが、私としてはもっとワーグナーらしいスケールの大きなうねりがほしい。意図的なのかもしれないが、重心が高めの、ちょっと軽くてしなやかなワーグナーになっていており、50年以上前、クナッパーツブッシュのレコードでこの「舞台神聖祝典劇」を繰り返し聴いた人間としては、実はかなり違和感を覚える。それに、少し一本調子でちょっと退屈してしまう。もちろん、好みによるだろうが。

 演出はグラハム・ヴィック。舞台は現代に移されている。聖盃の騎士たちは中東に滞在する欧米の兵士のような軍服姿で銃を持っている。キリスト教の聖地を守るために軍隊で守っているということだろう。アンフォルタスはまるで磔にされたイエス・キリストのような上半身裸で茨の冠を付けた姿で現れる。クンドリは黒で体中を覆ったブルカ姿で現れ、クンドリの登場場面ではマグダラのマリアの図像が示される。クリングゾールはアンフォルタスと同じような上半身裸の下着姿で現れ、去勢されていることを示すためだろう、その下着には血がこびりついている。舞台の背景で殺戮や強姦、略奪などの戦争犯罪行為が影絵で示される。クンドリが聖槍について語るとき、パルジファルの下腹部を触る。どうやら聖槍はペニスの隠喩として描かれているようだ。

 演出について整理すると、つまり、こういうことだろう。キリスト教徒たちも異教徒たちも聖槍(強いペニス、そして「征服」「権力」「武器」を象徴するのだろう)を奪おうとして残虐な行為を繰り返している。アンフォルタスは聖槍によって傷を受け、イエス・キリストのように人類の苦しみを知る存在になっているが、苦しむばかりでむしろ世界の戦いは激化している。敵対するクリングゾールは、奪われた権力を取り戻そうとして聖槍を使おうとしている。そこに無垢で純粋なパルジファルが現れ、争いのもとであった聖槍を取り上げ、聖化する。そして、キリスト教と異教の対立はやめ、人間の苦しみを知ったマグダラのマリアのようなクンドリとともに様々な民族の子どもたちが楽しく生きていくことのできる世界平和を打ち立てようとする。

 ちょっとわざとらしいが、現代の読み替え演出の中では、まあ私としてはぎりぎり許容範囲内。

 

ジョルダーノ 「シベリア」 20217月 フィレンツェ五月音楽祭歌劇場

 たぶん無観客なのだと思う。観客は一度も映されない。合唱団は全員マスク着用。

 このオペラの存在を初めて知った。1903年初校、1927年に改訂だとのこと。正直言って、あまりおもしろいオペラだとは思わなかった。

 舞台は、たぶん帝政ロシア時代のサンクト・ペテルブルク。高級娼婦(?)のステファナはヴァシリと愛し合うようになるが、ヴァシリはステファナの恋人である王子に侮辱されて王子を殺してしまう。逮捕されて、シベリア送りになるが、ステファナもそこについていく。ステファナはシベリアからヴァシリとともに逃げ出そうとして銃で撃たれて、ヴァシリに抱かれて死ぬ。

 かなり甘ったるいメロドラマだと思う。あまり印象に残る歌もなく、ドラマ的な盛り上がりもあまり感じなかった。イタリア人がトルストイなどの影響を受けて、シベリア送りの悲劇を描いてみようとして、結局、安易な物語を作ってしまった・・・そんな印象を受ける。

 ステファナのソーニャ・ヨンチェヴァは圧倒的。色気があり、声のドラマがある。ヴァシリのゲオルギー・ストゥルアは力演だが、声に輝きがない。グレビのジョルジュ・ペテアンらの脇役はとても充実している。

 指揮はジャナンドレア・ノセダ。要所を抑えた指揮ぶりに思える。演出はロベルト・アンド。映画的でわかりやすいが、黙役の映画クルーが舞台上に登場し、登場人物を撮影している(東京オリンピックの開会式を思い出した)。オペラの最後で、完成した映画が上演される様子が示される。これにどんな意味があるのか、よくわからなかった。もしかしたら、あまりに映画のメロドラマ的なので、それを緩和するためにあえてこのようにしたのだろうか。

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