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ルイージ&メルニコフ&N響 良い演奏だが、私の好みではなかった

 2022年5月21日、東京芸術劇場でNHK定期演奏会を聴いた。指揮は次期首席指揮者を務めるファビオ・ルイージ。曲目は、モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」序曲と、アレクサンドル・メルニコフが加わってモーツァルトのピアノ協奏曲第20番、最後にベートーヴェンの交響曲第8番。

「ドン・ジョヴァンニ」序曲は、明確にまとまった名演奏だと思った。N響も美しい音を出している。短調のざわざわする雰囲気もとても見事。旋律もとても美しく流れる。さすがだと思った。

 2曲目のコンチェルトでは、メルニコフのピアノが繊細で抒情的。優しく、静かに、美しく。触ると壊れるものを大事に大事に扱うように丁寧に音楽を作っていく。静謐に、まさに沈黙の中に音を点描するよう。それはそれで素晴らしい演奏なのだが、私はちょっと退屈した。ずっとこのような調子だとスケールが小さくなり、せせこましくなってしまう。私はあまり繊細でこまごました人間ではないので、ずっとこれではやりきれない。ファビオ・ルイージのオーケストラも、初めのうちは自分のペースで演奏しているように見えたが、徐々にメルニコフに合わせていくように思えた。

 メルニコフがアンコール曲を弾いたが、曲名はわからない。ちょっとユーモラスな小曲だった。プロコフィエフっぽい。

 休憩なしでベートーヴェンの交響曲に入った。

 第8番は、ファビオ・ルイージが得意とする曲なのではないかと勝手に思っていた。きりりと引き締まって、大きくしすぎずに溌溂として深みのある音楽を作ってくれると思っていた。が、私の期待していたほどには、ぴしりと決まらなかった。

 ルイージらしい、引き締まった繊細な音で緊張感にあふれた演奏で、もちろん、とてもいいのだが、もしかしたら、まだN響が十分にマエストロのタクトについていけていないのではないか。びしりと決まらない。第3楽章ではかなりテンポをいじっていたが、私の耳にはそれも不発に聞こえた。もちろん、悪い演奏ではないのだが、私としてはもっと感動させてもらえると期待していたのだった、

 そんなわけで、よい演奏だったが、ちょっと私の好みとは異なっていた。

 

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