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ヴァイグレ&読響のブルックナー7番に感動

 2022621日、サントリーホールで読売日本交響楽団定期公演を聴いた。指揮はセバスチャン・ヴァイグレ。曲目は前半にルディ・シュテファン作曲の「管弦楽のための音楽」、後半にブルックナーの交響曲第7番(ノヴァーク版)。

 シュテファンは、第一次世界大戦で28歳の若さで戦死したという後期ロマン派のドイツの作曲家。この曲は初めて聴いた。部分部分はとても魅力的。美しい旋律があり、見事な音響がある。だが、構成に難があるのか、全体的には何のことやらわからなかった。ただオーケストラはしっかりと音を出し、指揮もしっかりと全体をコントロールしている印象はあった。

 ブルックナーの7番については素晴らしい演奏だと思った。第一楽章はかなり抑え気味。たぶん意識的に室内楽的にしているのだと思う。木管楽器の音などが鮮明に聞こえて美しい。第二楽章後半から盛り上がっていき、シンバルで爆発。そこから、音楽がこの上なく盛り上がっていく。まったく音楽に無理なところがなく、全体的に実に繊細。それでいて高揚していく。

 第二楽章は鎮魂の音楽として演奏されたようだ。だが、私にはこの曲はきわめてロマンティックに聞こえる。魂の奥底の人間の生命の本質を描くような音楽。タナトスとエロスが混在しているとでもいうか。これぞブルックナーの叙情だと思う。うっとりし、涙が出てくる。

 第三楽章のスケルツォも繊細でありながらも壮大。ヴァイグレが指揮すると、細かいところまで気が配られていて、野放図にはならない。そこがすごい。しなやかに躍動する。最終楽章もまさに魂が途方もない高みに導かれて昇華される。

 読響は金管楽器のちょっとした細かいコントロールミスはあったように思ったが、全体的にはしっかりした音響。日本のオーケストラもこれほどしなやかで深みがあり、しかも壮大な音を出すことができるようになったのだと、改めて驚く。

 年齢を重ねるうちに、ブルックナーをしんどく感じ始めていた。昔は家でもブルックナーの録音ばかりを聴いている時期があったが、近年は家ではめったにブルックナーをかけない。実演でもブルックナーを敬遠するようになっていた。だが、久しぶりに聴くと、やはりブルックナーには魂をゆすぶられる。

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コメント

私も家ではブルックナーを聴かなくなりました。でも、樋口様と同じように、生で聴くと「やっぱりいいな」と思いました。ヴァイグレのブルックナーは、往年のドイツの巨匠のブルックナーとはちょっとちがって、滑らかで口当たりのいいブルックナーだと思いますが、でも、とくに第3楽章、第4楽章のフォルテの充実は並外れていて、「なんだかすごい音を聴いてしまった」と感じました。

投稿: Eno | 2022年6月22日 (水) 15時48分

Eno 様
コメント、ありがとうございます。ブログを拝見しました。やはり、いらしてたんですね。
第1・2楽章の繊細さ、第3・4楽章の躍動は本当に素晴らしいと思いました。おっしゃるとおり、クナッパーツブッシュやクレンペラーのような無骨さとは無縁、ヴァントのようながっしりした構築物とも異なり、しなやかで穏やかなブルックナーでした。しかし、それはそれでとても深く躍動するブルックナーになっているので驚きました。本当にブルックナーはいいですね!

投稿: 樋口裕一 | 2022年6月23日 (木) 22時30分

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