アトリウム弦楽四重奏団ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏初日 ちょっと期待外れ
2022年のサントリーチェンバーミュージック・ガーデンが始まった。6月5日、アトリウム弦楽四重奏団ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏の初日を聴いた。
この団体はこれまで何度か聴いた記憶がある。そのたびに鮮烈な印象を受けた。チャイコフスキーの弦楽四重奏曲では、チャイコフスキーらしい陰鬱な憂いなどかけらもなく、スピーディーでスリリングで挑戦的な音楽に驚いた。ベートーヴェンでも刺激的だった。今回は事情があって残念ながら1、2回しか聴くことができないが、大いに期待していた。
ただ、初日の3番、16番、7番を聴いた限りでは、メンバーの間でまだ十分に演奏スタイルについて意思統一ができていないように思えた。合わせているだけ、というわけではないが、この団体のしたいことがはっきりと見えてこない。スピーディーにスリリングに演奏しているのはわかるのだが、そして、それはそれで素晴らしい音なのだが、ただ走っているだけに聞こえる。
とりわけ16番。16曲中、私はこの曲が最も好きなのだが。苦悩の人生の先に訪れたこの上なく透明で平明な境地を聴きたかったのに、それが聞こえてこない。いや、そのような境地でなくてもいい。何かしら、ベートーヴェンの達成したエッセンスのようなものを示してほしい。だが、聞こえてくるのは、3番や7番と大差のない音楽だ。いや、そもそも3番と16番と7番の曲想の違い、それ以前にベートーヴェンの弦楽四重奏曲の初期と中期と後期の鮮明な違いが浮かびがってこない。
7番についても、この曲らしい、スケールの大きさを感じない。スピーディーなのはいいが、それが一本調子になり、せせこましく感じられる。私は少し退屈した。
アンコールは第一番の第一楽章。これはよかった。ちゃんと音楽を自分のものにしているのを感じた。
もしかしたら、東京に到着したばかりで、直前のリハーサルの時間をあまりとることができなかったのではないかと思った。それを確かめるためにも、今回の全曲演奏をあと数回聴きたいのだが、あと1回聴けるかどうか微妙な状態なのが残念だ。
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