日生劇場「セビリアの理髪師」 スローテンポに驚いたが、最後には感動
2022年6月12日、日生劇場でNISSAY OPERA2022「セビリアの理髪師」をみた。演出は粟國淳。6年ぶりの再演。今回の指揮は沼尻竜典、管弦楽は東京交響楽団 。とても完成度の高い上演だった。
歌手陣は充実。アルマヴィーヴァ伯爵の小堀勇介は張りのある輝かしい美声。ロジーナの山下裕賀も音程のいい美声。オペラブッファの型を踏まえた演技も見事。フィガロの黒田祐貴も容姿、歌唱ともにこの役にふさわしい。ただ演技面ではあと少しこなれた動きがほしいと思った。バルトロの久保田真澄は早口の歌も演技も素晴らしい。ドン・バジリオの斉木健詞は立派な声に圧倒された。ベルタ の守谷由香は魅力的に演じていたが、肝心のアリアで音程が不安定だったのが残念。
沼尻の指揮については、あまりのスローテンポに驚いた。近年の世界のロッシーニのオペラ上演に比べて、圧倒的に遅いと思う。日本でロッシーニのオペラをみると、ほとんど毎回、テンポが遅いのを感じる。なにか理由があるのだろうか。日本人の歌手はロッシーニの早口の歌を歌えないのか、あるいは何らかの独特の解釈があるのか。
もちろん、さすがにマエストロ沼尻というべきか、しっかりとオーケストラをコントロールし、東響もロッシーニにふさわしい音を出して、とてもよかった。最後には感動させてもらった。だが、途中まで、やはり、もう少しロッシーニ特有のクレシェンドや疾走感を味わいたいと強く思った。
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