葵トリオのベートーヴェンとフランク 素晴らしかった
2022年6月8日、サントリーホールブルーローズで、サントリーチェンバーガーデンの一環、葵トリオのリサイタルを聴いた。曲目は前半にベートーヴェンのピアノ三重奏曲第2番と細川俊夫のトリオ、後半にフランクの協奏的三重奏曲第1番。毎年、ベートーヴェンのピアノトリオを1曲と、そのほかの曲を演奏していくシリーズの2回目だとのこと。とてもいい演奏だった。
鮮烈で明解で生命力にあふれた音。構成感もしっかりしている。ヴァイオリンの小川響子、ピアノの秋元孝介、チェロの伊東裕のいずれも素晴らしい。
ベートーヴェンの第2番のトリオは作品1ということで、ごく初期の作品だが、やはりしっかりとベートーヴェンらしさを表出してくれた。くっきりして力にあふれている。なるほど、これが若きベートーヴェンだと思う。三人の強い感情表出が見事。まったく力みもなく、自然に音楽を高揚させていく。
細川俊夫(ご本人が見えられていた)のトリオもとてもおもしろかった。プログラムによる奥田佳道氏の解説によれば現世と来世を結ぶシャーマンの世界だとのことだが、私は、高い弦の音がサイレンのように聞こえ、戦争や大災害の悲劇の場における生命の叫びのような気がした。
後半のフランクの曲もとてもおもしろかった。この曲の実演を聴くのは初めてだ。録音についても、23枚組のフランク選集で一度聴いたくらいだと思う。CDで聴いたときにはあまり印象に残らなかったのだが、葵トリオで聴くと、やはり激しい感情の表出が描かれて、とても感動的だ。ヴァイオリン・ソナタや交響曲と同じように、中年男の秘めた情熱のようなものがこの曲からも聞こえてくる。
先日のクヮルテット・インテグラや葵トリオなど、日本の若い団体が世界に通用する力をつけてきている。頼もしい。こうした室内楽の団体を育ててきたこのサントリーチェンバーガーデンの意義はとてつもなく大きいと思う。
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