クヮルテット・インテグラ 素晴らしいバルトーク!
2022年6月6日、サントリーホール ブルーローズでクヮルテット・インテグラリサイタルを聴いた。
大ホールでは、クレメルとアルゲリッチのコンサートが開かれていた。もちろん、そちらにも心惹かれたが、この二人の演奏は実演も何度か聴いているし、CDもたくさん聴いているので、今回はパス。でも、横で演奏されると心が動く。そんな中での、クヮルテット・インテグラだった。注目の若い団体だ。
曲目はモーツァルトの弦楽四重奏曲第15番、デュティユーの「夜はかの如し」、後半にバルトークの弦楽四重奏曲第5番。
モーツァルトを聴いた時点では、ゆるぎないしっかりした音の重なりに共感しつつも、ゆっくりとした一つ一つの音をかみしめながら進んでいく音楽には少し疑問を持った。くっきりと音が浮かび上がって素晴らしいのだが、四つの楽章がすべてそのような演奏だと、ちょっと退屈に感じた。
だが、ディティユーはとてもよかった。なるほど、この四重奏団の音は現代曲に合う。鮮烈でクリアでゆるぎなく、音の重なりに濁りがない。それが生き生きと流動していくので、変化していく万華鏡を見るような思いがする。
後半のバルトークは素晴らしかった。なるほど、これがバルトークだと思った。その昔、アルバン・ベルク・カルテットがバルトークの弦楽四重奏曲全集を録音した時、夢中になって聴いた。が、だんだんと興味が薄れていた。いつの間にか、バルトークは好きな作曲家ではなくなっていた。だから、この第5番を聴くのは実に久しぶりだった。だが、今回聴くと、やはりこの曲はすごい! 鮮烈な音の重なり、音のせめぎ合い。くんずほぐれつ、そこに生命が宿り、生きた音になっていく。これがバルトークの醍醐味だった!
女性二人を含む若い四人がこれほどのエネルギッシュで情熱的な演奏をするとは。リズム感もいいし、音程もいいし、一つ一つの音も美しい。
きっと、クレメル、アルゲリチもよかっただろうけど、こちらの演奏も負けていなかったに違いないと思った。
ヴィオラの山本一輝さんがマイクを持って、謙虚な挨拶。今回のリサイタルの隠れテーマは「夜」だとのこと。へえ・・・と思った。アンコールはハイドンの「日の出」の第2楽章。これもよかった。
頼もしい若手が出てきたものだ。世界に羽ばたく弦楽四重奏団になることだろう。楽しみだ。
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