ドゥネーヴ&N響 ラヴェルにふさわしい精妙な音
2022年6月11日、東京芸術劇場でNHK交響楽団定期公演を聴いた。指揮はステファヌ・ドゥネーヴ、曲目は前半にデュカスのバレエ音楽「ペリ」(ファンファーレつき)と、メゾ・ソプラノのステファニー・ドゥストラックが加わって、ラヴェルの「シェエラザード」、後半にドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」とフロラン・シュミットのバレエ組曲「サロメの悲劇」。
数年前にドゥネーヴの指揮するN響を聴いてちょっとがっかりしたのを覚えている。フランス音楽らしい音が聞こえてこなかった。ところが、今日はしっかりとラヴェルやドビュッシーの音が聞こえた。精妙で繊細。弦のトレモロなど本当に素晴らしい。N響はこの指揮者の求める音を出せるようになったということだろう。これほどまでにフランス的な音をN響が出していることに、私はちょっとした感動を覚えた。ただ、これがこの指揮者の持ち味なのか、肩の力は抜けているが、音の輪郭はしっかりしている。やや硬めの音といっていいだろう。ドビュッシーよりもラヴェルにふさわしい音だと私は思う。
最初の曲はデュカスの「ペリ」。デュカスは「魔法使いの弟子」ばかりが有名で、二流の作曲家扱いされているが、オペラ「アリアーヌと青ひげ」などは、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」に匹敵する静謐で精妙な音による傑作オペラだと思う。「ペリ」も音の絡み合いは実に美しい。
「シェラザード」もオーケストラがとても美しい。ドゥストラックの歌は、とても知的で明晰。ラヴェルにふさわしい。力任せに歌うのではなく、きれいな発音で、言葉を大事にして訴えかけるように歌う。素晴らしいと思った。
「サロメの悲劇」の実演を聴くのは初めてだった。堅めの音で、しかし精妙に音楽を広げていく。そして、透明な音で盛り上がっていく。管楽器もとても美しい。
フランス音楽にふさわしい音響が聴くことができて満足。ドイツ音楽好きの私はめったにフランス音楽を聴かないが、たまにこのような音響を聴くと新鮮な喜びを感じる。
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