ギルバート&都響のモーツァルト 「ジュピター」の終楽章に魂が震えた!
2022年7月25日、サントリーホールで東京都交響楽団の定期公演を聴いた。指揮はアラン・ギルバート。曲目は、モーツァルトの交響曲第39番・第40番・第41番「ジュピター」。
しなやかでやわらかい演奏。ニュアンスを込め、天を舞うように、優雅にやさしく音楽が進む。心を込めて歌うようにすべての楽器が鳴らされる。とりわけどの曲も第三楽章メヌエットがとても美しい。まさに、天女が舞うように演奏される。
そして、39番では優雅さが特に強調されていたが、40番になると優雅な舞の中に悲しみの要素が増えてくる。しかし、それはむき出しの悲しみではなく、あくまでもニュアンスのこもったしみじみとした悲しみ。
「ジュピター」になって、また少し様子が変わる。宇宙的に音楽が広がり、人生の深みが増す。優雅+悲しみ+人生の深みの音楽になる。39・40・41番が連続した一つの物語になっている。それぞれにフレーズに様々なニュアンスが込められているが、それらが有機的に結びついているのを感じる。ニュアンスを込めながらも、自然に音楽が流れていく。
そして、第4楽章に突入。
私は「ジュピター」の第3楽章まで、実を言うと、ギルバートと都響の作り出す絶妙の音楽を聴きながらも、少し居心地が悪かった。私はこのようなニュアンス豊かなモーツァルトは好きではない。優雅も悲しみもなしに、ニュアンスを込めずに疾走し、そうでありながらそこはかとない悲しみが伝わってくるような演奏が好きだ。だから、感心して聴きながらも、「こんなにニュアンスを込めなくてもいいのに・・・」と思っていた。
ところが、第4楽章を聴いて納得。まるで、オペラのフィナーレのように、39番の第1楽章から41番の第3楽章までのすべてがここに結集している。フーガの技法が取り入れられ、宇宙的に壮大な音響世界になる。これまでのすべての支流がここで合流し、高らかに生の賛歌を歌い上げる。優雅さを基調にしたこれまでの流れが、最後の、荒々しいとまで言えるような音響世界の伏線だったことに納得。
「ジュピター」の第4楽章がモーツァルトの管弦楽作品の最高峰であることを改めて感じる。まさに奇跡の音楽! それをギルバートと都響が目の前で作り出してくれている。感動に身が震えた。
都響のしなやかな音にしびれた。ギルバートの音楽の組み立てに感嘆した。そして、改めてモーツァルトの音楽に圧倒された。素晴らしい体験だった。
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