大野&イブラギモヴァ&都響のブラームス 感動に震えた
2022年9月3日、東京芸術劇場コンサートホールで東京都交響楽団定期演奏会を聴いた。妻の病状急変の少し前に聴いたコンサート以来、ほとんど一月ぶり。
考えてみると、昨年、妻の病気が発見されて以降、かなりの数のコンサート・チケットを無駄にした。チケットの購入も、行けなくなる場合を考えてふだんの半分以下に減らしていた。妻の体調の良いとき、誰かほかの家族が妻のそばにいられるときに限ってコンサートに出かけていた。今回のチケットも妻の病状によっては行けなくなるかもしれないと思って恐る恐る買ったのだったが、妻が亡くなってしまったので、結局聴けることになった。複雑な思いで会場に向かった。
指揮は大野和士。曲目は前半に、ヴァイオリンのアリーナ・イブラギモヴァが加わってブラームスのヴァイオリン協奏曲、後半にブラームスの交響曲第2番。
イブラギモヴァのヴァイオリンは何度か聴いているが、期待していた通りに素晴らしかった。出だしはドラマティックに激しい音楽だった。だが、力任せに音楽を高めるのではなく、繊細に美しく展開する。弱音がとりわけ美しい。女性的な演奏といってよいだろう。第二楽章では、特にその印象が強い。その意味で、あまりブラームスらしくないといえるかもしれない。写真で残されているような、髭もじゃで骨太の男性の音楽という感じがしない。もっと現代的で知的で繊細。しかし、生き生きとしており、力感にあふれている。終楽章には知的な音が力感にあふれて激しく盛り上がっていく。大野もそれをしっかりと支えている。これがイブラギモヴァの音楽なのだろう。興奮した。
後半の交響曲もよかった。ただ、第二楽章は少し停滞しているように感じたが、気のせいだったか。終楽章はとりわけ素晴らしかった。協奏曲と同じように、論理的な構成感がズバリと決まり、音楽を高めていく。最後の二分間ほど、私は感動に震えていた。
やはり音楽は素晴らしい。音楽を聴くと、本来の自分に戻れる気がする。
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