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ルイージ&N響のシュトラウス 音響にやや不満

 2022916日、NHKホールでNHK交響楽団の定期演奏会を聴いた。指揮はファビオ・ルイージ。曲目は、すべてリヒャルト・シュトラウス。前半に交響詩「ドン・ファン」と、エヴァ・スタイナーが加わってのオーボエ協奏曲、後半に「ばらの騎士」組曲。

 改修工事が終わって、久しぶりのNHKホール。外観が変わっているのかと思っていたが、私の気づく限りまったく違いがない。ステージも座席も天井も壁も床も以前のままだと思う。もしかしたらトイレは違っていたかもしれないが、定かではない。音響もまったく変化を感じない。改善されていないようだ。私は2階中央部分で聴いたが、やはり音が届かない、鮮明ではないといったストレスを感じる。

 ルイージは相変わらずのきびきびとして繊細な指揮ぶり。豊饒な音楽ではなく、むしろ細身の、機敏な音楽と言っていいだろう。音楽全体をきっちりと把握して、ニュアンスをつけながら音楽を推進していく。「ドン・ファン」の指揮ぶりは素晴らしいと思った。理詰めに展開されるが、勢いがあり、ニュアンス豊かなので、堅苦しくなく、わくわく感がある。ただホールのせいなのか、もう少し抜けるような響きがほしいと思うのだが、ちょっとよどんだ雰囲気がある。それが少し残念。とはいえ、私は大いに感動した。シュトラウスの音響世界に酔った。

 オーボエ協奏曲については、私自身あまりなじんだ曲ではないせいか、うまく整理して聴くことができなかった。冗漫でとりとめがないと感じた。スタイナーのオーボエは音がしっかりして、一つ一つの音がきれいだったが、残念ながら、それ以上には感銘を受けなかった。

「ばらの騎士」組曲の冒頭、私は少し違和感を覚えた。グシャッとした感じに聞こえたのだが、気のせいだったのだろうか。私の席からはよくわからなかったが、楽器の一つが音を外したか何かのことが起こったのではないかと思った。ただ、その後は取り戻し、ところどころ、とても繊細で甘美な音楽になった。ルイージの音楽の作りについては、私は完全に納得する。曲想の変化も素晴らしい。オペラの場面が目に浮かぶような音楽。

 ただ、これもホールのせい、あるいは席のせいかもしれないが、おそらくはルイージが求めていると思われるような音が、私の耳には届いてこない。生硬さを感じる。全楽器のうねりに濁りを感じる。もちろん、悪くはない。しばしば感動を覚えた。だが、もっともっと官能的でしなやかで輝かしい音が聞こえるはずなのに、そうではないと感じたのだった。

 全体的に、とてもいい演奏だった。ただ、最高に素晴らしい演奏ではなかった。

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