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モーツァルトのフルート四重奏曲全曲を楽しんだ

 2022913日、ルーテル市ヶ谷ホールで、モーツァルトのフルート四重奏曲全曲演奏会を聴いた。

 モーツァルトはフルートをあまり好まなかったといわれるが、私は2つの協奏曲も4つの四重奏曲も大好きだ。ケッフェル200番代の、言ってみれば、あまり深みのない音楽ではあるが、音楽そのものの美しさにあふれている。若い人が4つの四重奏をすべて演奏するというので、ぜひ聴きたいと思った。

 フルートは森岡有裕子、そのほかはエウレカ・カルテット(森岡聡、廣瀬心香、石田紗樹、鈴木皓矢)の演奏。

 良くも悪くも若々しい演奏だと思う。最初に演奏された第3番の第1楽章は素晴らしかった。明るくて初々しくて溌剌。この曲にふさわしい。私はフルートの音はもっと突き抜けている方が好みだが、森岡のフルートはテクニックも十分、音楽の楽しさを味わわせてくれた。ただ、第2楽章になると、ちょっと音楽に迷いがあるように感じた。そして、それは2曲目の第2番になると、一層強まっているように感じた。フルートとほかの人の間で十分に音楽を詰めていない気がした。どんな音楽を作りたいのか、はっきりしない。弦楽器が、ただ合わせているだけになっている。特に変奏形式の部分で、それぞれの変奏をどのように演奏するか定まっていないのを感じた。この演奏を聴きながら、この団体は、このようなちょっと大雑把な演奏で良しとしているのか、それとも、リハーサル不足でこうなってしまったのか、どちらなのだろうと考えていた。

 前半の最後の、弦楽四重奏によるアダージョとフーガハ短調K.546は、それまでと違って、演奏意図がはっきりわかる見事な演奏だった。きっとこの団体は、フルート四重奏曲についても、このように練り上げた表現にしたかったのだと思う。ただ、きっとリハーサルの時間が十分に取れずに、練り上げられなかったのだと思った。

 後半の第4番は前半の第2番よりはずっと良かった。そして、最後に演奏された、最も有名な第1番については、素晴らしい演奏だった。この曲はこの団体にとって取り組みやすかったのか、それとも練り上げる時間が十分に持てたのか。

 まとめて言うと、第3番の第1楽章とアダージョとフーガと第1番が素晴らしかった。それだけでも私は満足だった。もちろん、アダージョとフーガの時代のモーツァルトは別格。だが、フルート曲を作曲していた時代のモーツァルトもやはり魅力的だ。

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コメント

 ご無沙汰しております。
 京都になかなか行けないです。食べに行きたいなあ。

 ところでモーツァルトのフルート嫌いについて私もそう思っていたのですがね。日曜昼のFMで✕クラシックというのがありましてお聞きになっていませんか。その番組で竹輪のフルートで有名な(と言われると事実なんだけど本人が厭がっている)多久潤一朗さんがゲストで登場し、実はそうではなく、フルート協奏曲の作曲を依頼した人がひどくてモーツァルトさんは懲り懲りしたのに、また作曲を依頼してきてオーボエ協奏曲を流用して渡して、その流用がばれて揉めたというような話をしていました。フルートとハープの協奏曲のフルートも単純なようでなかなか凝ったものだとも話していました。(記憶で書いているので違っていたらごめんなさい。)決して嫌いではなかったようですよ。

投稿: YAMAMAN | 2022年9月16日 (金) 00時24分

YAMAMAN様
京都に私も行きたいと常々思っているのですが、なかなか行けずにいます。
モーツァルトのフルートについてのご指摘、ありがとうございます。現在、私はFM放送はまったく聞いておりませんが、そういえば、フルート協奏曲を依頼した人とのトラブルについてはどこかで聞くか読むかした記憶があります。なるほど、そういうことだったのかもしれませんね。そうそう、フルートとハープの協奏曲がありますよね。「魔笛」もそうですし、あれほどフルートを美しく聴かせてくれる人が、フルートが嫌いだったはずがないですね。ありがとうございました。

投稿: 樋口裕一 | 2022年9月17日 (土) 08時57分

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