尾高&バンゼ&新日フィルのシュトラウスを堪能!
2022年10月3日、サントリーホールで新日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴いた。指揮は尾高忠明。曲目はすべてリヒャルト・シュトラウス。前半に初期の作品「セレナード 変ホ長調」と最晩年の「四つの最後の歌」、後半に交響詩「英雄の生涯」。
「セレナード」は管楽器の中に1台だけコントラバスが加わるという編成。なぜコントラバスが含まれるのか、よくわからなかった。これまでCDで何度か聴いたことがあったが、ミミだけではコントラバスの音には気づかなかった。いや、それどころか、今回もコントラバスが演奏されていることは視覚的には確かめられたが、音ははっきりと認識できなかった。いずれにせよ、あまり名曲とは思わなかった。
「四つの最後の歌」を歌うのは、ユリアーネ・バンゼ。私は録音や映像で何度か聴いたことがあるので大いに期待していたが、まさに期待通り。ただ、あまりきれいな声とは言えないかもしれない。むしろ、「スッピン」の声とでもいうか。化粧なし、飾りなしに、生のままの声を出している雰囲気がある。オペラ的にベルカントで歌うというよりも、語るように、化粧っ気のない声で歌う。それが素晴らしい。死を前にした諦観、生と死への思いが深い思いを込めながら歌われる。生の声であるがゆえに官能的でリアルに感じる。何度か感動に震えた。これはリートの一つの歌い方の典型だと思った。素晴らしい。
第3曲「眠りにつくときに」のヴァイオリン・ソロをコンサート・マスターの崔(チェ)さんがとても官能的に弾いて、歌と見事に合致した。オーケストラも官能的で色彩的で、見事にシュトラウスの世界を作り出した。
「英雄の生涯」も、マエストロ尾高らしい、丁寧でしなやかでツボを得た演奏だった。こけおどしがまったくなく、自然に音楽が流れる。細部までしっかりとコントロールできているのがよくわかる。ここでも崔さんのヴァイオリンが実に官能的。そして、音楽が高まるところで見事に高まり、しっかりと盛り上がりを作る。構成感もしっかりしていて、音楽が立体的に出来上がっていく。とても見事だと思った。
ただ、やはりオーケストラの音が、きっと理想的ではないのではないのかとは感じた。音楽が素晴らしく高揚しているのだが、どうも音がクリアに響かない。あと少しの音の威力がほしいと思った。
とはいえ、とても満足。セレナードでは若きシュトラウスの心を聴くことができ、「四つの最後の歌」では、シュトラウスらしい色彩的なオーケストラとバンゼのリアルな歌を聴くことができた。「英雄の生涯」では尾高指揮の力感にあふれ、知的で繊細な音を味わうことができた。シュトラウスを満喫できた。
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