カヴァコスのバッハの無伴奏曲 至高の音楽!
2022年10月10日、紀尾井ホールでレオニダス・カヴァコスのバッハ無伴奏ヴァイオリン曲全曲演奏の2日目を聴いた。曲目は、無伴奏ソナタ第1番とパルティータ第2番、パルティータ第2番。
素晴らしい演奏! 魂の動きそのものが表現されたかのような音楽だと思った。ときどき、ミスをするのだろう。かすれたような音が出る。だが、それも含めて魂の表現になしていく。孤高の世界という表現がぴったりだろう。気高く、鷹揚で自由。一種、達観したかのような世界。従来のバッハのように堅苦しくない。端正な表現だが、折り目正しいわけではなく、自由で遊びの精神すら感じる。猛烈な速さで引きまくる個所もあるが、それもまた魂の高揚であったり、飛翔であったりする。細身の音程の良い音がびしっと決まってクリアでありながら、まさに自由。そのような音で人々を高見の世界にいざなう。
しかも、音楽の組み立てが極めて理にかなっているのを感じる。シャコンヌなども、徐々に高まり、繰り返し、広がり、縮まり、飛翔し、移動していくのがとてもよくわかる。そして、音楽と同時に聴く者も同じように広がったり飛翔したりする。なんという至高の音楽であることか!
アンコールもバッハの無伴奏曲。いずれも素晴らしい。観客も見事だった。どの曲も、曲が終わってもすぐには拍手が起こらず沈黙が続いた。たぶん、最後のアンコール、ソナタ第2番のアンダンテを弾く前、カヴァコスが英語で「拍手しないで沈黙を守ってくれ」といったように思った(私の英語力では、席が後ろの方だったせいもあって、あまり自信がない!)が、やはり拍手が起こった。本当に「拍手しないでくれ」と言われたかどうか自信がないので、私も拍手した。
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