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東響「サロメ」 グリゴリアンのサロメに大興奮

 20221118日、ミューザ川崎シンフォニーホールで東京交響楽団によるリヒャルト・シュトラウス「サロメ」(演奏会形式)を聴いた。まだ興奮している。私にとって今年最高の演奏だった。

 まず何といってもサロメを歌ったアスミク・グリゴリアンがすさまじい。とてつもないサロメ! 分厚いオーケストラがフォルティシモで鳴り響く中で、サロメの声がビンビンと響き渡る。しかもこの役にふさわしい、少女のような強靭な細くて澄んだ声。歌の表現力も見事。そして、容姿もまたとても美しい。これ以上のサロメがこれまで存在しただろうか。もしかしたら史上最高のサロメではないかと思う。ザルツブルク音楽祭などの映像でグリゴリアンのサロメを見て、素晴らしいと思っていたが、実演を聴いて改めてそのすごさを味わうことができた。

 そのほかの歌手陣も申し分なかった。ヨカナーンのトマス・トマソンも見事に歌った。ただ、サロメに伍して厚いオケの中で歌ったせいなのか、最後の方で2音、声がかすれたように思った。

 ヘロデのミカエル・ヴェイニウス、ヘロディアスのターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーも申し分のない歌。舞台付きのオペラ以上に、これらの人物像を明確に描いている。声の威力も素晴らしい。

 日本人歌手も負けてはいない。ナラボートの鈴木准と小姓の杉山由紀の功績も大きいと思う。冒頭でこの二人が世界を作り出してくれたおかげで、サロメがリアルに動き出した。そのほか、わき役に至るまで全員が完璧なまでに歌っている。日本人歌手たちのレベル向上には目を見張る。

 そして特筆するべきは、ジョナサン・ノットの指揮する東京交響楽団の大健闘だろう。演奏会形式であるにもかかわらず、全力の演奏が可能なのは、もちろん、先ほどから書いているとおり、この厚いオーケストラの中でも凛凛と響くグリゴリアンをはじめとする歌手がそろっていたからではあるのだが、それにしてもシュトラウスのオーケストレーションを最高度に再現し、目くるめく世界を描き出している。この難しい演奏をよくもまあこれほど完璧にできるものだと、改めて圧倒された。

 ノットの指揮は、シュトラウス的な官能的な豊饒さと表現主義的なグロテスクな緊張感を最高のバランスで組み立てていた。これが「サロメ」の世界だと思う。スタンディング・オーベーションが起こった。私も立ち上がって拍手を送った。このブログにも何度か書いたと思うが、私は中学生のころからの、ということはつまり55年以上前からシュトラウス・ファンで、「サロメ」は「ばらの騎士」「四つの最後の歌」とともに最も好きな曲だ。最も好きな曲でこれほどの名演奏を聴くことができて本当に満足だった。興奮冷めやらぬまま帰宅した。

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