日生劇場「ルチア」 エドガルド=城宏憲、エンリーコ=加耒徹がとてもよかった
2022年11月12日、日生劇場でNISSAY OPERA 2022「ランメルモールのルチア」をみた。指揮は柴田真郁、演出は田尾下哲、管弦楽は読売日本交響楽団。
歌手陣の中では、エドガルドの城宏憲がよかった。勢いのある美声で音程もしっかりしている。訴える力もあった。エンリーコの加耒徹も、初めのうちこそ少し声が出なかったが、どんどんと本調子になって後半は見事だった。一途であるがゆえに妹を犠牲にする男をしっかりと演じていた。ノルマンノの吉田連もしっかりした声。冒頭部分ではこの人が最も声が出ていた。
アルトゥーロの髙畠伸吾は嫌味な男をうまく演じ、声もしっかり出ていた。ライモンドのジョン・ハオは力のある声だが、ちょっとコントロールしきれていない部分を感じた。
ルチアの高橋維については、後半だんだん良くなったが、音程が不安定で、声も十分に伸びなかった。そして、表現力もまだまだ十分ではないと思った。狂乱の場も、ただ歌っているという感じで、ルチアの絶望も狂気も伝わってこない。演技力もあるとはいえない。演技によっても狂気が伝わらなかった。とても良い歌手だとは思うのだが、ホールを満たす観客を感動させる力はまだ持っていないと思った。
柴田真郁の指揮については、オーケストラをしっかりとまとめているとはいえるが、ドラマ性を十分に感じることができなかった。ライモンドがルチアの狂乱を伝える場面など、確かにドニゼッティの音楽自体、妙に落ち着き払っているとはいえるのだが、それにしても今回の演奏は、まるでのどかな出来事を伝えるような雰囲気。もう少しドラマティックにできないものか、と思える場面がいくつかあった。もしかして、意識的にそのように指揮しているのだろうか。
亡霊を意識した演出で、たびたび舞台の奥でこの城に出没するという亡霊が現れたが、私にはそれにどのような意味があるのかよくわからなかった。しかも、ルチアがアルトゥーロを刺す場面が舞台奥で行われるなど、ストーリーの補足説明のようなことがなされていた。つまり、あまりに説明的な舞台だった。私はこれについても納得できなかった。
全体として、あまり満足できる舞台ではなかった。森谷真理、宮里直樹、大沼徹、妻屋秀和、伊藤達人らが出演する別キャストのほうはかなり印象が異なるのかもしれない。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- ヴァン・カイック弦楽四重奏団 音楽そのものの醍醐味!(2026.10.09)
- 新国立劇場「イタリアのトルコ人」 演出の工夫に感心!(2026.10.07)
- カルテット・アマービレ&今井信子のブラームスの感動!(2026.10.06)
- 濱田芳通&アントネッロの「マタイ受難曲」 ドラマティックな人間ドラマ・群衆ドラマ!(2026.10.04)
- オペラ映像「ラ・ボエーム」「ナブッコ」「ドン・パスクヮーレ」「ばらの騎士」(2026.09.24)

コメント