メンデルスゾーン姉弟のピアノ三重奏曲 改めて二人の真価を知った
2022年11月15日、ルーテル市ヶ谷ホールで、メンデルスゾーン基金日本支部2022年の集い「フェリックスとファニーの絆~2人のピアノトリオ」を聴いた。
曲目は、前半にフェリックス・メンデルスゾーンの姉ファニー・メンデルスゾーンの代表作、ピアノ三重奏曲二短調、ピアニストの秋場敬浩さん、マズーア偕子さん(メンデルスゾーン基金日本支部名誉会長クルト・マズーアの夫人)、音楽学者の星野宏美さんの鼎談をはさんで、後半にフェリックス・メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第2番。演奏は、ドミトリー・フェイギン(チェロ)、漆原啓子(ヴァイオリン)、秋場敬浩(ピアノ)。
とても充実したコンサートだった。
私は一時期、ファニーに関心を持ち、CDを聴いたり、多摩市の男女共同参画推進のためのイベントに協力してファニーの曲を含むコンサートを企画したりしたので、ピアノ三重奏曲は何度か聴いたことがあった。確かに、ファニーの曲はフェリックスの曲に比べれば作りが単純で、ちょっと稚拙と言えば稚拙。しかし、初々しい楽想にあふれており、とても魅力的だ。フェリックスを思わせるような展開もある。フェリックスと同じように感性豊かでしなやかで、高貴。私は大いに楽しんだ。
鼎談では、私の知らないこともたくさん教えてもらえた。ただパネルディスカッションなどの数人による話を聞いていつも思うのだが、それぞれの発言が微妙にかみ合っておらず、それぞれが言いたいことを言っている印象を受ける。私の本来の仕事は読解・発信・文章に関するものなので、どうもその点が気になる。今日もそれが気になった。とはいえ、かみ合ってはいないが、それぞれの発言はとても興味深かった。三人の中で私はとりわけピアニストの秋葉さんの演奏者からの音楽そのものに向き合った率直な意見にとても共感した。
欲を言えば、今回のテーマである姉弟の絆について、もう少し掘り下げてほしかった。また、ユダヤ人という問題についても少し触れてほしかった。私としては二人の絆を強めている原因はユダヤ人としての差別だろうと思う。それについてまったく触れられなかったのが残念だった。
フェリックスのピアノ三重奏曲第2番もとても良い演奏だった。第1番に比べて、あまり美しくて親しみやすいメロディがないが、第1楽章の、つんのめるような独特のリズムも魅力的だ。そして、鼎談でも語られていた通り、終楽章の盛り上がりは素晴らしい。神聖なるものを求めて苦闘する魂の記録だと思う。それを三人の演奏者は見事に聴かせてくれた。
メンデルスゾーンは今もまだ過小評価されていると私は思う。改めて、この作曲家の真価を知った気がした。
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