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樫本&シュテッケル&藤田のメンデルスゾーンに圧倒された

 20221128日、サントリーホールで「スーパーソリスト達による秋の特別コンサート」を聴いた。演奏は、樫本大進(ヴァイオリン)、赤坂智子(ヴィオラ)、ユリアン・シュテッケル(チェロ)、藤田真央(ピアノ)。曲目は、前半にモーツァルトのピアノ四重奏曲第1番 ト短調とメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番、後半にブラームスのピアノ四重奏曲第1番。

 まさにスーパーソリストたちによる演奏。一人一人がめっぽううまいのが、ほんの少し聴いただけでわかってしまう! しかも、息がぴったり合って、まるで常設の団体のようにさえ聞こえる。さすがとしか言いようがない。

 藤田真央の実演を初めて聴いたが、ちょっとびっくり。軽いタッチでしなやかに、生き生きと音楽が動いているのを感じる。しかも、軽いタッチながら、短調の深い感情も十分に伝わってくる。こんなピアノの音をこれまで聴いたことがなかったような気がする。

 モーツァルトのト短調の四重奏曲は、意外と古典的に演奏されているのを感じた。あまりロマンティックな情感に流されず、形式重視で演奏されているようだ。ドイツ・オーストリアの三人の大作曲家の短調の曲を弾き分けようとしているのだと思う。しかし、実にしなやかな音! 藤田のピアノはもちろん、三人の弦楽器も本当に美しい。典雅で高貴な中にモーツァルトのト短調らしい悲しみの感情が聞こえてくる。ロマンティックに情感を高めずとも、古典派の中にしっかりと人間の心の襞が聞こえる。

 メンデルスゾーンの演奏は3曲の中でも最も素晴らしかった。古典的な形式の中にかなり濃厚にロマンティックな感情を加えた演奏だといえるだろう。樫本のヴァイオリンはかなり激しく感情を描き、メンデルスゾーンの痛々しい感情を強く描いているように思った。そして、ピアノが感情のほとばしりを叙情的に描く。チェロがもっと落ち着いた抑制的な感情を描く。三つの楽器が見事に合致しているのを感じた。メンデルスゾーンのこの名曲の魅力を存分に聴かせてくれた。本当に美しい旋律、深い情感、生き生きとした躍動。メンデルスゾーンを堪能した。

 ブラームスのピアノ四重奏曲も、もちろんとても良かった。とりわけ、第4楽章は躍動感にあふれ、四つの楽器が見事に高揚して生き物が疾走するような勢いがあった。ただ、第12楽章で少し緊張感が薄れたように感じたのは私の気のせいだったか。ブラームスの緊密に構築された重心の低い音楽が、少しほころびを見せ、不安定になったように思った。

 とはいえ、各人の力量はすさまじい。そして、藤田のピアノの音のしなやかな躍動感はいつまでも耳に残る。素晴らしいコンサートだった。

 観客の90パーセントほどが女性客だったと思う。藤田人気なのだろうか。樫本大進ファン、そしてシュテッケル・ファンの女性も多そう。

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